ありふれた恋のはじまり。

学園一の人気者。

そんな肩書きが一番似合う人がいる。

橘蒼真(たちばなそうま)

顔が良くて、運動もできて、誰にでも優しい。

私とは、住む世界が違う人。

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「ねぇねぇ、橘くん!放課後カラオケ行こうよ!」

「え、私も行きたーい!」

「私も私も!」

今日も変わらず女の子に囲まれている彼。
優し気なほほえみで彼女たちと話している。

蒼真「今日はちょっと用事あるからパスで」

そんな会話を横目に私は自分の席で親友の美月と話をする。

美月「花音聞いて聞いて!橘くんまた告白されたらしいよ!
ほんっとにモテる男って大変だよね~」

花音「そうなんだ…」

美月「あははっ、花音興味なさそ~」

花音「だって私には関係ないし…」

美月「まぁ、そうかもしれないけど!
私そろそろ花音から浮いた話の一つくらいは聞きたいな~」

花音「そ、そういうのはまだちょっと…」

休み時間を恋バナでつぶす普通の女子高生。
そう、私はいたって普通の、目立たない一人の高校生なはずだった。

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その日の放課後、私はいつも通り美月と下校しようとしていたものの、教室に筆箱を忘れたのに気付いた。

花音「あ、引き出しにいれっぱだ…!ごめん美月、教室に忘れ物しちゃったから取りに行って来る!先帰ってていいからね」

美月に一言伝えて、教室までの道のりを駆け足で進んだ。


教室のドアを開けてふと視線を前に向けると
窓際の席で橘蒼真が机に突っ伏して寝ているのが見えた。

花音(お、起こした方がいいのかな…)

そう考えながら自分の席に行き引き出しから目的の筆箱を取り出そうとする。
夕日が差し込んでいて、教室は静かだ。

筆箱に手をかけたとき

ガタンっ。

そう音がなる。
筆箱が机に引っ掛かり音が鳴ってしまった

花音(しまった…)

急いで彼の方を見ると、眠そうに目をこすりながらも顔を上げた橘蒼真と目が合う

花音「ご、ごめんなさいっ!起こしちゃって…」

慌てて謝るも彼は特に気にした様子はない

蒼真「…別に。えっと、朝倉さんだよね?」

いつもより少し不愛想な話し方に戸惑いつつも、ふと呼ばれた自分の名前に目を丸くする。

花音「…え?」

「名前、知ってるんだ。」

漏れ出た本音に、彼はくすりと笑ったのが分かった。

蒼真「クラスメイトの名前くらい覚えてるよ」

そう返され、なんだか恥ずかしくなった私は手に持ったままだった筆箱を鞄にツッコミ速足で教室の出口まで行く

花音「わ、私、忘れ物とりに来ただけなので、あの、そのっ」

慌てすぎてどもっていると彼はくすくすと笑いながら口を開いた

蒼真「うん、慌てすぎて転ばないようにね。また明日」

花音「ま、また明日!」

私は咄嗟にそう返し、逃げるように教室を出た。

花音(ま、また明日、か…)

帰り道、その一言が頭の中を駆け巡った。

たった一言なのに。

何度も、彼の顔と一緒に思い出された。