ここは、普通の教室だった。
机と椅子の山が端っこにあるけど…散らかってるわけでもないし。
ただ、教室を見回していると…
(あれ、まだ人がいたんだ……)
私の視線の先には、教卓に座りながらスマホをいじる一人の男の子が居た。
彼は、私に見られていることに気づいたのか、一度スマホをポケットにしまった。
その瞬間。
空気がピリッとした。
「…そこの女、何しに来たの?」
驚いてしまうほど、低い声だった。
今すぐ出ていけ…という、まるで縄張りに入られ怒りに満ちるライオンのようだった。
彼は…鶴雅琉叶くん。
一つ年下の二年生で、笑顔を作らないし毒舌で、近寄り難い…らしい。
聞いたことはなかったけれど、彼も授業に出たくないのかな…?
「少しだけ…お話をしたくて」
私が鶴雅くんの質問に答えると、彼は次に氷室くんと須賀也くんの方に視線を向けた。
「…ねぇ、豊くん。どうせ入れたのキミでしょ?」
「ん?奏も同罪やで?」
「俺は違うから。豊が言うから仕方なく賛同してやっただけで…」
「うわ逃げた」
「お前さぁ……」
三人は、仲がいいんだな…。
なんだかその光景が微笑ましくて、私は無意識に小さく笑みを作っていた。
な、なんか私…親目線みたいになってる……。
「あ、会長ちゃんはそこの席座って〜」
自分にツッコミを入れてると、須賀也くんが席に座るよう促してくれた。
会長ちゃん…わ、私のことだよね……。
独特な呼び方に苦笑いを浮かべながらも、「ありがとう」とお礼を伝えて、私は席に座らせてもらう。
すると必然的に、三人と向かい合わせになっていた。
「……それで?急にここに来た理由は?」
氷室くんが、探るようにそう聞いてきた。

