「てる、オレ、プロポーズするけどいい?」
アヤトが大学を卒業する年、そう言われた。
「なんで俺に聞く?」
「んー。まだ好きでしょ?さくのこと。」
図星だった。
「さあ、な。」
いつもみたいに誤魔化したけど、アヤトにはそれが効かなくて、
「いいかげんみとめろし。」と少し怒られた。
「いんだよ。俺は幼馴染だから。」
「そっ。オレとさく、ほんとに結婚したらどうする?」
「めちゃめちゃ嬉しいよ。これは本気で思ってる。」
心の底からそう思う。アヤトのことが憎いとか全くなくて。
2人が付き合い始めた時、もしさくのことを泣かせたりしたら、
俺は一歩踏み出して幼馴染を辞めて、さくのことを奪おうと思っていた。
だけど、アヤトは一度も泣かせることなく、傷つけることなく、
ここまで付き合い続けていて見かけによらずずっと一途だった。
「てるが素直だと調子狂うわ、でもさんきゅな。」
「うるせー。
もう奪おうなんて思ってないから安心してプロポーズしてくださーい。」
「はーい。断られたらどうしよ。」と珍しく弱気になっていた。
「アヤトが弱気なんて珍し、絶対大丈夫だから、安心しろ。
お前とさくが出会ってからさくは口を開けばアヤトくんがねー。ばっかりだから。」
嫌になるくらい聞いたさくからの「アヤトくん」という名前。
「幸せになれよ。お前しか幸せにできないんだから。」
「おーう。てるちゃんも幸せになってほしいよー。」
「てるちゃん言うな!」
こいつの話をするさくの顔はいつも幸せそうで、
そんな顔をさせられるのはアヤトだけ、俺はさくが幸せでいてくれればそれで良いんだ。
お酒が入っていたからなのかこの日はやけに素直になれた気がした。


