初恋が君に届くまで

明日も仕事だからと、丈はつむぎを早めに寝かせることにした。

「おやすみ、つむぎ。今日はありがとな」
「ううん、お誕生日をお祝いできて私も嬉しかった。おやすみなさい、綾瀬くん」

チュッとキスをしてからつむぎを見送ると、丈はシャワーを浴びて寝室に行く。

照明を落とし、窓の外に広がる夜景を眺めながら今日という日の幸せを噛み締めていた。

するとふいにコンコンコンとノックの音がして、丈はドアを振り返る。

「つむぎ? どうした?」
「ごめんね、綾瀬くん。私、すっかり忘れてて。ワインセラーとは別に、プレゼントのワインを冷蔵庫に入れておいたの」

そう言ってそっとドアを開けたつむぎが、赤ワインのボトルを差し出した。

「せっかく夕食で開けようと思ってたのに、ごめんなさい」
「いいよ、明日のお楽しみにする」
「そう? じゃあワインセラーに入れておくね」

つむぎは寝室に入り、ワインセラーの前にひざまずく。

「うん、ちょうどよさそうな温度。明日は美味しく飲めそう」

中にワインを入れて扉を閉めると、立ち上がって丈を振り返った。

「綾瀬くん、明日もお祝いさせてね」

そう言ってにっこり笑うつむぎから、シャンプーのよい香りが立ちのぼる。

「どうかした?」

つむぎが首を傾げると、着ている淡いピンクの部屋着の裾がふわりと揺れた。

胸元のリボンやシアー素材の袖が甘いテイストで、ミニのワンピースのように裾が広がる。

その下に七分丈のレギンスを履いているが、それよりも胸元が大きく開いているのに丈は目が釘付けになった。

きれいな鎖骨のラインがあらわになり、リボンを解くだけでスルリと肩先から落ちそうで、思わずその先を想像する。

「つむぎ」
「ん? なあに」
「そんな格好で男の寝室に入ったらいけない」

つむぎは「え?」と呟いて自分の姿を見下ろした。

「これ友ちゃんに選んでもらったの。やっぱり私には似合わない?」
「違う。可愛すぎて危ない」

目をそらすと堅い声で「もう部屋に戻りな」と告げる。
けれどつむぎは動かない。

「つむぎ? 早く自分の部屋に……」
「あのね、友ちゃんに言われたの。つむぎの心の準備ができたらこれを着ればいいよって」
「え? それは、どういう……?」
「綾瀬くん。私、まだよくわかってなくて上手くできないと思う。だけど綾瀬くんが好きで好きでたまらないの。だから、その、お願いしてもいいですか? がっかりさせてしまうかもしれないけど、私、もっと綾瀬くんに触れてもらいたくて」

次の瞬間、丈は腕を伸ばしてつむぎの身体をかき抱いた。