初恋が君に届くまで

丈のゲストルームにつむぎが泊まることが多くなり、丈は少しずつつむぎのために家具を増やしていった。

つむぎの手料理は美味しく、一緒に作る時間も幸せで、なによりそのあとお酒を飲む時間が楽しみで仕方ない。

それはもちろん、酔うとつむぎのいつものひとり言が始まるからだ。

ソファに座ってお酒を飲み、程よく酔ったところで丈は後ろからつむぎを抱きしめた。

つむぎはクタリと身体を預けて、甘い声で言う。

「綾瀬くんはねぇ、顔を見ちゃうと緊張しちゃうの。だからこうやって、後ろからギュッてしてもらうのが好き」

そうかそうか、バックハグがそんなに好きか。

「でもやっぱり顔見たくなるなぁ。かっこいいもんね。ちょっとだけ見ちゃお」

そう言うとつむぎは身体を少しよじって後ろを向き、チラッと視線を上げる。

ん?と優しく微笑むと、慌てて前に向き直った。

「ひゃあ、バレちゃうかと思った。目が合いそうになったよ。ふう、びっくりした。それにしてもかっこいいよねぇ、綾瀬くん」

そんなつむぎは可愛くてたまらんよなぁ。

「綾瀬くんの腕の中って、安心する。あったかいし守られてるみたい」

トンと頭をもたれさせてきたかと思うと、つむぎはそのままスーッと寝入った。

「えっ、つむぎ?」

顔を覗き込むと口元に笑みを浮かべたまま、気持ちよさそうに眠っている。

「やれやれ、天真爛漫だな」

気を許してくれているのは嬉しいが、こうも無防備だと己の理性が吹き飛びそうになる。

丈はなるべくつむぎの顔を見ないようにして抱き上げると、ゲストルームに運んだ。

そっとベッドに寝かせると、優しく頭をなでる。

「狼にならないよう、なんとかがんばるよ。おやすみ、俺の眠り姫」

額にチュッと口づけてから、丈は気持ちを振り切るように部屋をあとにした。