初恋が君に届くまで

「海がすぐそこなんだね。すてき……」

ジェラートを食べ終え、歩いて5分ほどの広い公園に行くと、目の前には真っ青な海が広がっていた。

潮風が心地よく頬をなで、つむぎの髪をふわりと揺らす。

芝生が生い茂る広場では、まだ夏休みらしい子ども達が元気に追いかけっこをしていた。

「思い出すね、体育祭。綾瀬くん、リレーでぶっちぎりの優勝だったよね」
「見てたの?」
「もちろん。すごい差が開いてたのに、バトン受け取った瞬間、本気モードの綾瀬くんが一気にごぼう抜きしたんだもん。女の子達、きゃー!って盛り上がってたよ」
「そうか」

周りがどんなに盛り上がろうとも、つむぎが見ていてくれたことがなにより嬉しい。

「渡辺も応援合戦の演舞、がんばってたよな」
「知ってたの? 同じ青組だったこと」
「もちろん。いつも同じところでタイミング外すから、目が離せなかった」
「えっ、やだ! 恥ずかしい」

つむぎは両手で頬を押さえる。

「でも今ならちゃんとできるよ?」
「今!? え、逆に今?」
「うん、覚えてるもん。こうでしょ?」

そう言うとつむぎは、小さく口ずさみながら踊り始めた。

「オー、エスオー、1、2、3、オー、エスオーエスオー、オーー、エス、オス!」

両手を腰に当てて最後にピョンと飛び跳ねる仕草がたまらなく可愛らしい。

そしてやっぱり振り向くタイミングがズレている。

「ね? できたでしょ?」

得意げに笑うつむぎに手を伸ばし、気づけば胸に抱きしめていた。

「あの、綾瀬くん?」
「おまえが好きだ、……つむぎ」
「え?」

腕の中のつむぎが息を呑む。

「高校生の時からずっと好きだった。忘れられずに、今もずっと。偶然再会できた運命に感謝して、もう二度と離さない。俺のこの腕の中に閉じ込めておきたい」

つむぎの頭を抱き寄せて、その髪にそっと口づける。

ゆっくりと身体を起こすと、つむぎは目に涙をいっぱい溜めていた。