初恋が君に届くまで

美術館を出ると広場の噴水で子ども達がはしゃいだ声を上げていた。

「涼しげで気持ちいいね」
「そうだな」

風になびく髪を右手で押さえて微笑むつむぎが愛おしい。

「綾瀬くん、ジェラート売ってるよ」
「ん? ああ、食べる?」
「いいの? じゃあ……ちょっとだけ」

なんだそれは、可愛いじゃないか。
小首傾げて、ちょっとだけよ?
いい、たまらなくいい!

丈はつむぎの手をギュッと握って、イタリア語でメニューが書かれたオシャレなジェラートショップに行く。

「綾瀬くん、あの。逃げないから、大丈夫よ?」

そう言ってつむぎは手を解こうとするが、させるもんか。

丈はますます強くつむぎの手を握りしめた。

「どれがいい?」
「えっと、バニラがいいんだけど、ストロベリーとチョコチップも迷っちゃう。あっ、キャラメルリボンにモカチップ、クッキークリームもある!」

目を輝かせるつむぎにクスッと笑い、「じゃあ全部買おうか」と言うと、つむぎは慌てて首を振った。

「ダメ、お腹壊しちゃうよ?」
「そうだな、それならまた来よう。全部の味を制覇するまで」

つむぎはキョトンとしてから、おかしそうに笑い出した。

「ふふっ、チャレンジャーだね。さすがは綾瀬くん」
「負けず嫌いだからな」
「ふふふ、そうだよね。目指すは優勝!」
「ああ、もちろん」

顔を見合わせて笑い、今日のところはつむぎがバニラとストロベリー、丈はクッキークリームとモカチップの2色にした。

二人並んでベンチに座り、噴水を見ながらジェラートを味わう。

「渡辺、ひと口食べるか?」

そう言って丈がジェラートをスプーンですくって差し出すと、つむぎは「ううん」と小さく首を振ってうつむいた。

「どうして?」
「だって……恥ずかしいから」

なんだそれは、可愛いだろ!

いや待て、なにが恥ずかしい?
はっ、これか?
スプーンの間接キス!

なるほど、そうか。
うい奴め。

「渡辺、じゃあ、アーンして」
「えっ、な、なに?」
「このまま食べろ。ほら」

口元にジェラートを近づけると、つむぎは反射的に小さくパクっと口にした。

「どう、美味しい?」
「うん」

恥ずかしそうにうつむくつむぎが、これまた可愛い。
可愛いの大渋滞だ。

しかもほっぺにジェラートがちょこっとついているではないか。

それは計算ですか?
違いますね。
天然だとしたら、完璧です!

「渡辺、じっとしてて」
「え?」

顔を上げたつむぎの頬を指先でなぞってジェラートを絡め取ると、丈はチュッとその指を舐めた。

つむぎは目を見開いて顔を真っ赤にする。

「渡辺、溶けるよ?」
「え、あっ、うん」

我に返って一生懸命ジェラートを食べるつむぎを、丈は優しく見守っていた。