初恋が君に届くまで

しばらく走ってから高速道路に乗ると、つむぎがおずおずと訊いてくる。

「あの、綾瀬くん。どこに行くの?」

ドキーンと丈の心臓が跳ねた。

(あ、綾瀬くん……? 酔ってないのに、綾瀬くん)

嬉しくて返事をするのも忘れる。

するとつむぎが、窓の外に流れる標識を見て怯えたように呟いた。

「大黒……埠頭?」

もしや誰もいない埠頭で、海にドブーンと沈められるのを想像しているのだろうか。

「大丈夫、違うから」

丈は笑って、大黒埠頭の先の出口で高速道路を下りた。

「着いたよ」

駐車場に停めて車を降り、助手席のドアを開けて手を差し伸べる。

「ありがとう」

そう言ってはにかむつむぎの柔らかい手を引くと、丈はそのままつむぎを腕に抱きしめそうになった。

「綾瀬くん、ここって、美術館?」

その声にハッと我に返る。

「ああ、そう。渡辺、絵が好きだろ?」
「うん、好き!」

顔を上げてにっこり笑いかけられ、丈のハートは鷲掴みにされた。

(好き……、好き? こんなに可愛い笑顔で、俺のことを好きって?)

ワクワクした様子のつむぎと並んで、丈はドキドキしながら美術館に向かう。

まるで外国に来たような美しい外観の美術館は、一歩足を踏み入れると開放的な吹き抜けの空間が広がり、自然光がたっぷりと降り注いでいた。

つむぎは真剣な眼差しでアートをじっくり眺め、シルクスクリーンのワークショップにも参加する。

「こういうの、すごくよい刺激になります」

そう言ってさすがのセンスで布に鮮やかな花の模様を描いていた。

最後にミュージアムショップに立ち寄り、つむぎは独創的なデザインのポストカードとクリアファイルを手に取る。

丈は横から手を伸ばして受け取り、レジで会計を済ませてからつむぎに手渡した。

「ありがとう!」

嬉しそうなつむぎの笑顔に、丈も思わず頬を緩めた。