初恋が君に届くまで

「おはよう、渡辺」
「お、おはよう、ございます」

土曜日の朝10時。
マンションのエントランスに車を停めて【着いたよ】とメッセージを送ると、つむぎは水色のワンピース姿で現れた。

「可愛いな」

目を細めてそう言うと、つむぎはビクッと肩を縮こめる。

「その……ちょろいもんだ、とか、そういうことですか? 力で勝てると思うなよ、とか」
「ん? なにそれ」
「逃げられると思うな、とか」
「ああ、確かに」

仰け反って後ずさるつむぎの手を取り、「どうぞ」と車に促す。

観念したようにつむぎは助手席に座った。

エンジンをかけながら、ふとつむぎに目をやると、締めたばかりのシートベルトがねじれている。

丈はつむぎのベルトを一度外してから、腕を伸ばして締め直した。

急に顔を近づけたせいか、つむぎはドキッとしたように身を硬くする。

頬を赤く染めるつむぎが可愛くて、思わずクスッと笑みをこぼしてしまった。

「じゃあ出発するよ。あ、よかったらアイスティーどうぞ」

そう言ってドリンクホルダーに、ドライブスルーで立ち寄ったコーヒーショップのカップを置くと、つむぎはまじまじとカップを見つめた。

「なに、コーヒーの方がよかった?」
「いえ、あの。眠くなる薬とかは、入ってない、ですよね?」
「もちろん。あ、眠くなったら寝てていいけど」
「とんでもない。絶対寝ません」

ブルブルと首を振るつむぎが可愛くて、会話が噛み合わないのも気にならない。

丈は口元に笑みを浮かべて車を発進させた。