初恋が君に届くまで

(マズイ、これはやってしまったな……)

ランチタイムになり、ネクサスのカフェテリアで丈はスマートフォンの画面を見ながらため息をつく。

読み返しているのは、つむぎとのメッセージのやり取りだ。

昨夜、送迎会のあとに強引に自分のアカウントをつむぎのスマートフォンに登録し、意気揚々と二次会に向かった。

可愛いうさぎのアイコンで【つむぎ】と表示される名前にニヤニヤしながら、テーブルの下で早速メッセージを打つ。

あまりの嬉しさに己を忘れていたと、今ならわかる。

【わあ、綾瀬くんも同級生だってことに気づいてくれてたんだ。嬉しい!】

そんな返信が来ると、なぜ能天気に期待していた?

つむぎのメッセージは明らかに動揺を隠し切れていなかった。

それに対して、【これで終わりじゃないよ。これからも君とのこの縁を大事にしていきたい】と伝えたかったのに、なぜか自分はニヤリとほくそ笑むモアイ像のスタンプを送ったのだった。

返って来たのは、目を潤ませてブルブルと震えるうさぎのスタンプ。

(絶対に怖がらせたな)

はあ、と大きく息を吐いて顔を伏せた。

「お? なんだ丈。ようやくこっちに帰って来たかと思ったのに、ずいぶん落ち込んでるな。なにかあったのか?」

通りかかった同期の草加(くさか)に声をかけられ、なんとか顔を上げる。

「久しぶり、元気にしてたか?」
「こっちのセリフだ。どうした? 仕事が上手くいかなかったとか?」
「いや、仕事は全く問題ない」
「じゃあ女か? なーんて、おまえは恋愛に関してはドライで……」
「ああ、そうなんだ」

ええ!?と草加は仰け反って驚いた。

「おまえが? 恋愛無双、向かうところ敵なしの綾瀬丈が、落とせない女でもいるのか?」
「落とせないどころか、怖がらせて逃げられそうだ」
「へえ! 詳しく聞かせろよ」

楽しそうに草加は向かいの席に腰を下ろす。

丈はつむぎとのことを手短に話した。
聞き終えた草加は、両腕を組んでしきりに感心する。

「いやー、驚きだわ。女性関係に妙にドライだとは思ってたけど、まさか高校時代の淡い恋心をずっと抱えていたとはなあ。ピュアだねー、丈くん」
「からかうなよ」
「それで? 逃げられそうな彼女を捕まえたくて悩んでるって訳か。せっかく運命の再会を果たしたのに、諦めるのか?」

そう言われた瞬間、プツンと迷いの糸が切れるのを感じた。

「諦めるわけないだろう。何年想い続けたと思ってる? ようやくまた会えたこの奇跡を、そう簡単に手放すとでも思うのか?」

草加はふっと笑みをもらす。

「おやおや、完全にスイッチ入りましたね。見せてもらおうじゃないの、丈の本気の恋を」
「ああ、見せてやるとも」

沸々とつむぎへの想いが心の底から湧き上がってくるのを感じて、丈は早速スマートフォンを手にした。