(ちょっと待て。色々、どういうことだ?)
つむぎをマンションまで送ったあとのタクシーで、丈は一人真剣に考えを巡らせていた。
これまでのことを冷静に振り返る。
半月ほど前、上司に新しい取引先としてフィラートの仕事を任された。
「フィラートは、日本に店舗のないイタリアのハイブランドの家具や食器、洋服やバッグなどを公式に販売している会社だ。歴史は浅いが現代のニーズに合っていて急成長している。だがまだ企業の経営としては手探りらしく、戦略に必要なデータを集めるシステムをうちにお願いしたいとのことだ。先方の植木さんからは、しばらくフィラートに常駐する形で携わってほしいと言われている。綾瀬くん一人で大丈夫か?」
そう訊かれて丈は「はい、お任せください」と答えた。
ITベンダー企業としてはトップと言われるネクサス・インテグレーションに入社して今年で5年目。
これまでは先輩についてそのノウハウを学んでいたが、初めて一人で任された案件とあって自然と力が入った。
フィラートについて下調べをし、ある程度のシステム設計をしておいてから、いよいよ先方を訪れる日を迎える。
まずは植木と名乗る男性社員と名刺を交換したあと、隣に立つウェブデザイナーの女性にも名刺を差し出したところで丈はハッとした。
(この子、もしかして?)
平静を装いつつ、チラリと視線を向ける。
小柄で清楚な雰囲気のその女性は、肩までのボブヘアでメイクはナチュラル。
どこかあどけなさの残る顔には見覚えがあった。
「初めまして、ネクサス・インテグレーション株式会社の綾瀬と申します」
言い慣れたセリフで名刺を差し出すと、相手も同じように名乗る。
「初めまして。株式会社フィラートのウェブデザイナー、渡辺と申します」
受け取った名刺には『渡辺 つむぎ』とあった。
(やっぱりそうだ、あの子だ)
嬉しさが込み上げ、一瞬で頭の中は高校時代に戻る。
だがここは仕事の場だと気持ちを切り替えた。
その日の仕事を終えて帰宅すると、ガサゴソとクローゼットを探って高校の卒業アルバムを取り出す。
数年前、同窓会の幹事になった時に実家から持って来ておいたのだ。
(結局彼女は同窓会に来てくれなかったな)
3年2組のクラス委員だった人から、同窓会欠席者のお知らせとして『渡辺つむぎ』と連絡を受けた時は落胆した。
その時だけでなく、彼女は一度も同窓会に来てくれたことはない。
もう二度と会うことはないのだろうか。
そう思っていたのに、いきなりこんな形で再会できるとは。
丈は卒業アルバムをめくりながら思い出にふけった。
つむぎをマンションまで送ったあとのタクシーで、丈は一人真剣に考えを巡らせていた。
これまでのことを冷静に振り返る。
半月ほど前、上司に新しい取引先としてフィラートの仕事を任された。
「フィラートは、日本に店舗のないイタリアのハイブランドの家具や食器、洋服やバッグなどを公式に販売している会社だ。歴史は浅いが現代のニーズに合っていて急成長している。だがまだ企業の経営としては手探りらしく、戦略に必要なデータを集めるシステムをうちにお願いしたいとのことだ。先方の植木さんからは、しばらくフィラートに常駐する形で携わってほしいと言われている。綾瀬くん一人で大丈夫か?」
そう訊かれて丈は「はい、お任せください」と答えた。
ITベンダー企業としてはトップと言われるネクサス・インテグレーションに入社して今年で5年目。
これまでは先輩についてそのノウハウを学んでいたが、初めて一人で任された案件とあって自然と力が入った。
フィラートについて下調べをし、ある程度のシステム設計をしておいてから、いよいよ先方を訪れる日を迎える。
まずは植木と名乗る男性社員と名刺を交換したあと、隣に立つウェブデザイナーの女性にも名刺を差し出したところで丈はハッとした。
(この子、もしかして?)
平静を装いつつ、チラリと視線を向ける。
小柄で清楚な雰囲気のその女性は、肩までのボブヘアでメイクはナチュラル。
どこかあどけなさの残る顔には見覚えがあった。
「初めまして、ネクサス・インテグレーション株式会社の綾瀬と申します」
言い慣れたセリフで名刺を差し出すと、相手も同じように名乗る。
「初めまして。株式会社フィラートのウェブデザイナー、渡辺と申します」
受け取った名刺には『渡辺 つむぎ』とあった。
(やっぱりそうだ、あの子だ)
嬉しさが込み上げ、一瞬で頭の中は高校時代に戻る。
だがここは仕事の場だと気持ちを切り替えた。
その日の仕事を終えて帰宅すると、ガサゴソとクローゼットを探って高校の卒業アルバムを取り出す。
数年前、同窓会の幹事になった時に実家から持って来ておいたのだ。
(結局彼女は同窓会に来てくれなかったな)
3年2組のクラス委員だった人から、同窓会欠席者のお知らせとして『渡辺つむぎ』と連絡を受けた時は落胆した。
その時だけでなく、彼女は一度も同窓会に来てくれたことはない。
もう二度と会うことはないのだろうか。
そう思っていたのに、いきなりこんな形で再会できるとは。
丈は卒業アルバムをめくりながら思い出にふけった。



