誰も愛さない天才王の覚醒 〜俺が新・王? 両親が命懸けで守ってくれた国なので、十人の最強の寵妃と完璧に経営してみせます〜

ギルバート派の暗躍は、日に日に露骨さを増していた。

彼らは金と権力を散りばめ、後宮の側室たちをも内部から崩そうと工作員を放つ。

エキゾチックなシルクが揺れ、甘く重厚な香気が漂う『夜香宮』。

夜の静寂の中、第8側室シャディア・アルサードの寝所に、一人の男が滑り込んだ。ギルバート派が送り込んだ内応工作員である。

「シャディア様……。砂漠の国とて、足元の怪しい若造(アルフレッド)より、正統なるギルバート様に与する方が得策でしょう。ギルバート様が即位されたあかつきには、あなた様を筆頭正妃に――」

工作員が甘言を囁こうとした、その瞬間。

「あはっ……ふふふ……」

シャディアは艶やかな唇を歪め、鈴を転がすように笑った。

彼女が優雅に指を鳴らすと、室内に満ちていた甘い香りの色が微かに変わる。

男は突如、激しい眩暈と呼吸困難に襲われ、膝から崩れ落ちた。

「ひっ……な、毒……!?」

「愚かな男。我が砂漠の国ではね、強い男にしか価値がないの」

シャディアは裸足で床に降り立つと、苦しむ男の顎を美しく彩られた足先で持ち上げた。

その瞳には、砂漠の毒蛇のような妖艶で冷酷な光が宿っている。

「アルフレッド様は氷のように冷たいけれど、あの目……自分の信念のために国ひとつを盤上に乗せる『本物の男』の目よ。反してあんたたちの担ぐギルバートとかいう男……ただの欲望の出涸らしじゃない。反吐が出るわ」

数分後、シャディアは自ら『夜香宮』を出て、執務室のアルフレッドの元を訪れた。

床に転がされた工作員から吐かせたギルバート派の密友リストを、机の上に放り投げる。

「これ、私からのプレゼントよ、我が王」

「……シャディア。なぜこれを私に?」

「勘違いしないで。私はただ、一番強い男の味方でいたいの。……私を失望させないでね、アルフレッド様?」

砂漠の寵妃の妖しい笑みに、アルフレッドは力強く頷いた。