「……順番通り、今夜は第10側室アリアの部屋か」
深夜、アルフレッドは自らが定めた規則に従い、アリアが待つ『銀河宮』を訪れた。
後宮の慣例であれば、甘い夜が始まるはずの刻限。
しかし、部屋の扉を開けたアルフレッドの前に広がっていたのは、予想を裏切る光景だった。
天窓から星空が差し込む広い部屋の中央。
大きな机の上には、王国全体の徴税記録、物流データの羊皮紙、そして巨大な戦術マップが乱雑に広げられていた。
アリアはベッドの上にではなく、机に向かって没頭していた。
「……アリア。夜の訪問だぞ」
「あ、陛下。ちょうど良いところに。この西方の通関税の数理モデルですが、過去三年の変数を当てはめると、明らかに特定の貴族が横領している計算になります。検分してください」
アリアは振り向きもせず、数字の並んだ羊皮紙を突き出してきた。
アルフレッドの口角が、微かに上がった。
「……面白い。ハミルトン公爵の裏帳簿か」
「はい。ベッドで無駄な時間を過ごすより、この計算式を解く方が遥かに有益かと」
「同意する」
王はベッドに向かうことなく、アリアの向かいの椅子に腰掛けた。
夜通し交わされるのは、愛の言葉ではなく、国家予算と戦術論理の激論。
二人は机を挟んでチェスを指すように思考を戦わせ、朝の光が差し込むまでペンを走らせ続けた。
これこそが、アルフレッドの目指した「誰も愛さない、ただ機能する後宮」の真の姿であった。
深夜、アルフレッドは自らが定めた規則に従い、アリアが待つ『銀河宮』を訪れた。
後宮の慣例であれば、甘い夜が始まるはずの刻限。
しかし、部屋の扉を開けたアルフレッドの前に広がっていたのは、予想を裏切る光景だった。
天窓から星空が差し込む広い部屋の中央。
大きな机の上には、王国全体の徴税記録、物流データの羊皮紙、そして巨大な戦術マップが乱雑に広げられていた。
アリアはベッドの上にではなく、机に向かって没頭していた。
「……アリア。夜の訪問だぞ」
「あ、陛下。ちょうど良いところに。この西方の通関税の数理モデルですが、過去三年の変数を当てはめると、明らかに特定の貴族が横領している計算になります。検分してください」
アリアは振り向きもせず、数字の並んだ羊皮紙を突き出してきた。
アルフレッドの口角が、微かに上がった。
「……面白い。ハミルトン公爵の裏帳簿か」
「はい。ベッドで無駄な時間を過ごすより、この計算式を解く方が遥かに有益かと」
「同意する」
王はベッドに向かうことなく、アリアの向かいの椅子に腰掛けた。
夜通し交わされるのは、愛の言葉ではなく、国家予算と戦術論理の激論。
二人は机を挟んでチェスを指すように思考を戦わせ、朝の光が差し込むまでペンを走らせ続けた。
これこそが、アルフレッドの目指した「誰も愛さない、ただ機能する後宮」の真の姿であった。



