新法の発布に伴い、後宮に最初に輿入れを果たしたのは、かつてエレナを支えた「伝説の側室たち」の娘たちだった。
赤瓦が燃えるように輝く『紅蓮宮』に入内したのは、第1側室ブリジット・バルトロメウス。
母譲りの圧倒的な武勇を持ち、女性でありながら大剣を背負う最強の女騎士である。
そして、金細工で彩られた『金剛宮』に入内したのは、第2側室クロエ・ローゼンタール。
母フィオナの商才を遥かに凌駕し、若くして大陸屈指の商会を裏で仕切る天才商人だった。
その夜、アルフレッドは法に基づき、第1側室ブリジットの『紅蓮宮』を訪れた。
部屋に入るや否や、アルフレッドを迎えたのは甘い香水でも、しなやかな身ごなしでもなかった。
――ドスッ!という重い音と共に、床に突き立てられた巨大な大剣だった。
「ようこそ、我が夫にして冷血な王よ」
革甲冑を纏ったブリジットが、不敵な笑みを浮かべて立ち塞がる。
「噂通り、女を抱く気ゼロの目だな。いいぜ、私としてもお前と寝室を共にするより、剣の稽古でもしていた方がマシだ」
「……ブリジット。貴様は側室としてここに来たのだろう」
「言ったろ? 私は強い奴の味方だ。だがな、男としてお前に惚れたわけじゃない。この国を私に守らせる覚悟があるかどうか、見極めに来ただけだ!」
呆れたように息を吐くアルフレッドだったが、翌夜、第2側室クロエの『金剛宮』を訪れた際も、同じような洗礼を受けることとなった。
豪華絢爛な部屋の中央で、クロエはベッドではなく、山積みの帳簿とそろばん(計算機)を叩いていた。
「あら、陛下。お早いお着きで」
クロエは眩い金髪を揺らし、妖艶に微笑む。
「今夜は愛の囁きでもしてくださるのかしら? でも残念、今の私には陛下の愛より、来期の税収予測の方が100倍魅力的ですの。……あ、ついでにそこの国家予算の数字、間違ってますわよ?」
「……何?」
「ふふ、冷徹な氷の王様。私たちを『愛さない駒』として集めたつもりでしょうけど……甘いわよ? 私たちはただの駒になるつもりなんて、最初からないんだから」
挑発的に笑う二人の異色な寵妃。
誰も愛さないと誓った氷の天才王アルフレッドの「愛なき後宮」は、初手から波乱の幕開けを迎えていた。
赤瓦が燃えるように輝く『紅蓮宮』に入内したのは、第1側室ブリジット・バルトロメウス。
母譲りの圧倒的な武勇を持ち、女性でありながら大剣を背負う最強の女騎士である。
そして、金細工で彩られた『金剛宮』に入内したのは、第2側室クロエ・ローゼンタール。
母フィオナの商才を遥かに凌駕し、若くして大陸屈指の商会を裏で仕切る天才商人だった。
その夜、アルフレッドは法に基づき、第1側室ブリジットの『紅蓮宮』を訪れた。
部屋に入るや否や、アルフレッドを迎えたのは甘い香水でも、しなやかな身ごなしでもなかった。
――ドスッ!という重い音と共に、床に突き立てられた巨大な大剣だった。
「ようこそ、我が夫にして冷血な王よ」
革甲冑を纏ったブリジットが、不敵な笑みを浮かべて立ち塞がる。
「噂通り、女を抱く気ゼロの目だな。いいぜ、私としてもお前と寝室を共にするより、剣の稽古でもしていた方がマシだ」
「……ブリジット。貴様は側室としてここに来たのだろう」
「言ったろ? 私は強い奴の味方だ。だがな、男としてお前に惚れたわけじゃない。この国を私に守らせる覚悟があるかどうか、見極めに来ただけだ!」
呆れたように息を吐くアルフレッドだったが、翌夜、第2側室クロエの『金剛宮』を訪れた際も、同じような洗礼を受けることとなった。
豪華絢爛な部屋の中央で、クロエはベッドではなく、山積みの帳簿とそろばん(計算機)を叩いていた。
「あら、陛下。お早いお着きで」
クロエは眩い金髪を揺らし、妖艶に微笑む。
「今夜は愛の囁きでもしてくださるのかしら? でも残念、今の私には陛下の愛より、来期の税収予測の方が100倍魅力的ですの。……あ、ついでにそこの国家予算の数字、間違ってますわよ?」
「……何?」
「ふふ、冷徹な氷の王様。私たちを『愛さない駒』として集めたつもりでしょうけど……甘いわよ? 私たちはただの駒になるつもりなんて、最初からないんだから」
挑発的に笑う二人の異色な寵妃。
誰も愛さないと誓った氷の天才王アルフレッドの「愛なき後宮」は、初手から波乱の幕開けを迎えていた。



