絶叫すんべ! 道産子JKは、消滅寸前マイスイート・タウンで恋を叫ぶ?

 フェスの本番まで一か月を切り、結構忙しかったなー。その間、みんなは専門学校や大学の受験勉強はどうしていたんだろ? ボクはと言えば、まだ進路を決められずにいた。今年じゃなくても来年動き出せればいいじゃん、そう気楽に考え直してフェスの準備に打ち込んでるんだ。ボクの主な担当は、動画の撮影、編集と動画チャンネルの管理だ。
 ファッションショーの衣装は、リョウ部長が中心となって、一から作り直しているみたいだね。
 
 そうそう、ロマンが作ったプレスリリースのタイトルは……
"熊&鹿が『牛喰い絶叫大会』に宣戦布告! 九州・北海道、絶叫王者決定戦"
 攻めてるよねー。

 北海道と九州、それに東京のテレビ局や新聞社にプレスリリースが撒かれ、ボクは熊鹿町公式アカウントの動画チャンネルをスタートさせたんだ。

 まず、最初の動画は、使者を九州に派遣しての宣戦布告映像。
 ロマンが使者として指名したのは、ナント、ラナちゃん先生。
 先生は、現地の主催者に果たし状を渡した。独身二十代のうら若き先生は、鎧兜を装着させられちゃった。兜の頭にはクマ耳とシカ角は生えている。
 ナメた格好をした使者が、緊張で上ずった声で果たし状を渡すシーンはなかなかいい絵になったよ。
 九州側の主催者は怒りをあらわにするかと思ったけど、牛喰い絶叫大会の関係者に囲まれ、ラナちゃん先生は大歓迎を受けてたなあ。
 やっぱ、格の違いからくる余裕なのかな。
 いや、でもね、ラナちゃん先生って頼りなさげでオドオドしてるかと思うと挙動不審なところがあって、見ていてオモシロイし、何か憎めないんだよね……っていうか、すごく好き。みんなもきっと好きになる。ルカは『んなことねーよ』って言ってるけど、多分先生のこと、大のお気に入りだと思うよ。
 ロマンはというと、先生をお色気&巻き込まれヒロインとして売り込もうとしているフシがあるね。

 そして、先生がお色気担当として活躍する、第二弾の動画のタイトルは、
 "あちらの温泉、超メジャーだけど、負けてないわ、ワタシと『くましかの湯』"

 町営の天然温泉浴場は、広さといい、お湯の質といい、本当に気持ちいいと思う。そこに目をつけたロマン、サスガだね。
 町営温泉は少しだけ変わった。
動画のタイトルの通り、『くましかの湯』という愛称がつけられたのと、男の湯に熊の壁画が、女湯に鹿の壁画がドドーンと飾られたこと。熊鹿高校の美術の先生が中心となって、絵ごころのある町民を募って制作されたんだ。
 動画の主役、温泉レポーターは、もちろんラナちゃん先生。ボクたち四人もモブ役で出演。
 『撮影のためにバスタオルを使用しています』と画面にキャプションが入った瞬間に、なぜか先生のバスタオルが少しずれたりしてね。そんな温泉レポ動画の再生回数は無茶苦茶伸びて、ネットで『JKと教師の温泉』って話題にもなったんだ。町外から車でやってくる入浴者もずいぶん増えたよ。混浴じゃないんだけどなー。

 そして、いよいよフェス当日。
 駐車場が満杯になっちゃって、急遽、別の場所にも駐車場を用意したみたい。

 ここからは、ボクら被服部メンバーも登場だ。撮影は、商工観光協会のスタッフさんにおまかせ。
 ネット上では、動画チャンネルで北海道と九州の二元中継で配信されている。テレビ局の取材も入っているので、こっちは別の日にオンエアされるはずだ。
 熊鹿町長と『牛喰い絶叫大会』主催者がエールを交わし、フェアプレーを誓う。
 バトルのルールは、すごくシンプル。それぞれ同じ条件で設置された測定器で参加者の絶叫の音量を測り、一番大きな声を出した参加者がいる側が勝利。叫ぶ内容とかは何でもいいんだ。
 小学生以下の部門と一般の部門があるけど、勝負の対象は、一般部門。

 勝負の話は少し置いといて、まずは、ファッションショー。
 実はラナちゃん先生もメンバーに入ってもらい、五人が特設ステージとランウェイを歩き回ったんだ。

 ファッションモデルグループの名前は、ベタだけど『くましか♥ファイブ』。

 衣装は『クマ耳クマシッポコスチューム』と『シカ耳シカ角シカシッポコスチューム』の二種類。
 それぞれを二人ずつ着た。ボクはクマのコス。
 ストラップレス、ミニスカのモフモフのワンピースに、耳や角や尻尾をつけたアニマルコスだ。結構セクシーで可愛いよ。

 ステージに上がると……
 "きゃあ、カワッ!" "なまらメンコイ!" "こっち向いてー!" "むっちゃメンコイ!"
 との賞賛の声があっちこっちから聞こえてくる。

「ちょっ!コレ、何で私だけ!?」
 そうそう、紹介し忘れてたけど、ラナちゃん先生のコスだけ、ちょっと違うんだ。
「そろそろ初雪の季節だっていうのに……おなか、冷えるべ……」

 無理もないよね。先生は、クマのコスをベースに、なぜかシカの角が生えているというシュールな衣装で、露出もみんなより多い。おへそ丸出しのビキニスタイルで、スカートなしのパンツだけ。ラムちゃんって知ってるかな? その路線でシカの角が生えたクマさんビキニって感じ。
 
 さあ、ラナちゃん先生、遅れてステージに登場。

 "キャー!、カワッ!" "なまらメンコイ!" "手ぇ振ってー!" 
 "ラナちゃん、エッロー!" "エロメンコイ!" "セクシーティーチャー!"

 と、コールのボルテージはグンと上がった。

「エヘッ……アリガトウ……エヘッ、エヘッ……ハーイ!……エヘヘヘヘーーー!」

 と、先生もまんざらじゃなさそうに手を振って声援に応えてる。でも、ちょっと怖い。
 取材のカメラも、先生のクマのシッポを追っかけまわしていたよ。

 ボクたちはその恰好で大食い特設ゾーンに移動し、ジビエ料理の食レポをやった。
 熊肉、鹿肉やこの町で獲れる豊富な野菜やキノコなどの食材を活かし、ローストディア(鹿肉)やクマ肉とキノコのシチュー、熊と鹿あいびきのハンバーガーやメンチバーガー、そして中華料理や韓国料理もふるまわれた。 
 これらはルカパパと飲食店仲間が生み出したレシピばかりだ。オシャレなメニューづくりには、ルカも協力してるよ。
 かなり多めに材料を用意したらしいけど。予定よりも早く品切れになっちゃったみたい。
 ボクらは動画配信やテレビ取材向けに食レポをする役目だったけど、みんなガツガツ食べてて、まともにレポしてたのはロマンくらいかな。

 さて、お待ちかね。絶叫大会。
 見晴らし山の特設ステージには、すでに参加者が集まっている。
 ステージ脇のモニタ画面にはライバル、九州のステージが映っていて、これから同時にスタートする。
 ボクたち『くましか♥ファイブ』はイベントの最後に登場する。もちろん、ラナちゃん先生も逃がさないからね!

 雲一つない、青藍の空。
 もうすぐ初雪の季節だ。
「シバレルべ、シバレルべ、コワイ(疲れた)わ。早く温泉入りたい……」
ラナちゃん先生は、おへそを両手で隠しながら、何やら、うわ言みたいにブツブツつぶやいている。
 最後まで保ってくれるといいんだけど……

 先生も無理やり引き込んで、ボクたち五人で円陣を組み、手を合わせた。
 被服部長のリョウが発声する。

「みんな、今までよく頑張ったね! 今日は、思いの限り、絶叫すんべ!」
「「「「「 オー! 」」」」」

 小学生部門から始まり、着々とコンテストは進んでいった。
 一般部門に入ると、ボクたちに負けないくらいユニークなクマの着ぐるみ、シカの着ぐるみの人もいたよ。猟友会の人がいたら、間違って撃たれやしないかと少し心配だったけどね。

 ここまでの記録は、九州勢115デシベル、北海道勢が110デシベル。
 うー、ちょっと負けてる。

 そして、北海道がビハインドのまんま、いよいよボクら『くましか♥ファイブ』の出番となった。

◆トップバッター:リョウ被服部長

( *´ロ`)/≪

 わたしは、
 被服部の部長。
 でも、ウチの部、ちょっとしか
 お洋服つくれなかったー!
 クヤシイ! 札幌に出たら、
 死ぬほど作りまくってやるぞー!

結果は……
 85デシベル。まあまあトップバッターとしては、頑張ってくれた方だね。

◆二番手:ルカ副部長

(」°ロ°)」<<<<

 何で熊と鹿の料理ばっか
 作ってんだよ!

 それから!
 大人はオレたちをこの町に
 引き留めようとして。
 信じらんねー!
 オレ、こんな町イヤだ!
 ぜってー出てってやんべ!

結果は……
 110デシベル。さすがルカだ。北海道のトップには並んだ。あともう一息。
 あれ? 商工観光協会長が頭抱えてうずくまってるぞ。

◆三番手:ロマン会計担当

(۶•̀o•́)۶//

 この町は、
 ビジネスセンス、無さすぎー!
 ワタクシがもっと、
 はやく気づけてれば、
 間に合ったかもなのに!
 もうダメー!
 アキラメナサーイ!

結果は……
 70デシベルか。ちょっとお上品すぎたかな。これでも工事現場の脇を通るくらいのうるささだけどね。
 ありゃりゃ! 商工観光協会長、寝転んじゃった。

◆四番手:さあ、ボクの出番だ。……深呼吸。

(」〃>Д<)」

 みんなすぐにここから、
 出てく出てくっていうけど、
 ちょっと待ってよねー!

 みんなと一緒に、
 いいとこいっぱい見つけたじゃない!
 ボクはこの町が好きだ!

 この町で、もっといいトコ見つけて、
 もっといいトコ、
 つくっていこうよ!
 ねえ、みんな!

結果は……
 95デシベル。うーん、そんなもんかあ。
 でも、数値なんてどうでもよかった。叫んだ瞬間、冷たい秋の風が私の頬を通り抜けて、そこに温かい涙の跡をつけた。
『出て行く』と『残りたい』。そのふたつの感情が、胸の中で綺麗に重なり合って、ひとつの答えになろうとしていた。ボクの声は、青藍の空のどこまで届いただろう。
 あ、協会長さん、起き上がって拍手しているぞ。

そして……
◆ラストバッター:ラナちゃん先生。……やっぱ九州の壁は厚いかもねー。

(*」>д<)」 <<<<<<

 みんなゴメン!ほんとうにごめんなさい。
 本当はね、みんなには、この町から出て
 いっちょまえに活躍して欲しかった。

 でもね。もっと本音いうとね……
 あなたたちとここで一緒に
 暮らしたかったの。
 だって、楽しかったんだもん。
 部活で一緒に笑ってふざけて。
 混ぜてくれて、嬉しかったべさ!

 このフェスでも、
 いろいろむちゃブリされたけど、
 すごくワクワクしたんだ!

 ……だから、こんな騙すようなことしちゃって
 ……本当にゴメン。
 さあ、みんな、
 ここから翼を広げて羽ばたいて、
 新しい世界で頑張ってね!
 したっけ、私はここで教育者として頑張るよ。

 ……でもね……ちょっと寂しいの。
 あなたたちがいなくなると。
 心にぽっかり穴が空くんじゃないかって。

 ……だから私には愛が必要。
 新しい愛が!

 だから、みんな。外の世界から、
 素敵な男、捕まえてくるんだぞぉ!

 熊鹿町に、イケメンを沢山送りこむんだぞぉ!

(*」>д<)」約束すれーーーー!!!!!

結果は……
 125デシベル! 大逆転勝利!!!!
 この音量は、人間が聞くには危険なレベルらしい。

 「「「「やったべ!」」」」
 ボクたち四人は先生に駆け寄り、胴上げをした。

 「チ、ちょっ……はずれる!」
 誰かの手が先生のビキニコスのブラに引っかかり、ハラりと外れちゃった!

「わっ!」「ワッ!」「えっ!」「まあ!」「わあ♥」
  「「「「「ヤベヤベヤベヤベヤベヤベ!」」」」」

 ボクたち四人でラナちゃん先生を抱いて囲んで、そのまま特設ステージから降りた。

 動画配信事故はあやうく免れたけど、この瞬間、一日の配信数の最高記録を樹立!
 絶叫の内容もウケて、ラナちゃん先生は、熊鹿町のレジェンドになっちゃった。