――数分後。
「ああっ! またジョーカー引いちゃった!」
「ふはっ、陽菜、顔に出すぎ。ジョーカー引いた瞬間、眉毛下がったぞ」
蓮先輩がお腹を抱えて笑っている。
ゲームは終盤。
蓮先輩と藍里先輩は早々に上がり、残るは私と朔先輩の一騎打ちになっていた。
私の手札は2枚。
そのうち1枚がジョーカーだ。
朔先輩が、私の手札から1枚を引けば終わりという運命のターン。
「さ、朔先輩……どうぞ、引いてください」
ポーカーフェイスを作ろうと必死に無表情を保つ私。
朔先輩は私の前にすっと身を乗り出すと、カードには目もくれず、私の顔をじっと至近距離で見つめてきた。
「……ち、近いです、先輩……」
「右のカードに触れた時、お前の瞳孔が少し開いた。左のカードに触れた時は、息を止めたな」
「ええっ!? そんなことまで観察してるんですか!?」
「言っただろ、お前のことなら何でもお見通しだって」
朔先輩はフッと甘く微笑むと、迷うことなく私の『ジョーカーではない方』のカードをすっと引き抜いた。
「上がりだ」
「あぁ〜っ! 負けちゃったぁ……」
へなへなとソファに崩れ落ちる私を見て、朔先輩は満足そうに手札をテーブルに置いた。
そして、私の耳元に顔を寄せ、ナイショ話をするように低い声で囁く。
「俺の勝ちだ。……メイド喫茶、楽しみにしてるからな。俺の可愛い『専属メイド』さん」
「〜〜〜っ!」


