すっかり陽が落ちて、学園中が静まり返った午後七時。
文化祭前夜の教室は、昼間の賑やかさが嘘のようにひっそりとしていて、どこか違う世界のよう。
「よしっ、これで看板のバラは全部ついたかな」
クラスのみんなは下校時刻に合わせて帰ったけれど、私はエントランスに飾るアーチの微調整をしたくて、一人だけ教室に残っていた。
脚立に登り、一番上の目立つところに赤いお花紙のバラを貼り付けようと背伸びをした、その時。
ガタンッ!
「!?」
足元の脚立がバランスを崩し、私の体はふわりと宙に浮いた。
(落ちるっ!)
ギュッと目を瞑った瞬間――床に叩きつけられるはずの衝撃は来ず、代わりに、温かくて力強い腕の中にすっぽりと包み込まれた。
「……こんな時間まで残って、何ドジ踏んでんだ」
頭上から降ってきたのは、呆れたような低い声。
恐る恐る目を開けると、朔先輩の瞳が私を間近で見下ろしていた。
「さ、朔先輩!? なんでここに……っ」
「生徒会の見回りだ。α組の準備はもう完璧に終わってるからな。……それに、うちの世話係が全然ロイヤル棟に帰ってこないから、迎えに来てやったんだろ」
先輩は私をお姫様抱っこ状態で教室を横切ると、私の体を窓際の一番後ろの机の上にそっと降ろした。
けれど、腕は私の腰に回されたまま。
窓から差し込む青白い月明かりが、朔先輩の整った横顔を綺麗に照らし出していて、心臓がドキドキと踊りくるっている。
「あ、ありがとうございます……。でも、もうすぐ終わるところだったので……っ」
「嘘つけ。顔、ペンキついてるぞ」
「えっ!?」
文化祭前夜の教室は、昼間の賑やかさが嘘のようにひっそりとしていて、どこか違う世界のよう。
「よしっ、これで看板のバラは全部ついたかな」
クラスのみんなは下校時刻に合わせて帰ったけれど、私はエントランスに飾るアーチの微調整をしたくて、一人だけ教室に残っていた。
脚立に登り、一番上の目立つところに赤いお花紙のバラを貼り付けようと背伸びをした、その時。
ガタンッ!
「!?」
足元の脚立がバランスを崩し、私の体はふわりと宙に浮いた。
(落ちるっ!)
ギュッと目を瞑った瞬間――床に叩きつけられるはずの衝撃は来ず、代わりに、温かくて力強い腕の中にすっぽりと包み込まれた。
「……こんな時間まで残って、何ドジ踏んでんだ」
頭上から降ってきたのは、呆れたような低い声。
恐る恐る目を開けると、朔先輩の瞳が私を間近で見下ろしていた。
「さ、朔先輩!? なんでここに……っ」
「生徒会の見回りだ。α組の準備はもう完璧に終わってるからな。……それに、うちの世話係が全然ロイヤル棟に帰ってこないから、迎えに来てやったんだろ」
先輩は私をお姫様抱っこ状態で教室を横切ると、私の体を窓際の一番後ろの机の上にそっと降ろした。
けれど、腕は私の腰に回されたまま。
窓から差し込む青白い月明かりが、朔先輩の整った横顔を綺麗に照らし出していて、心臓がドキドキと踊りくるっている。
「あ、ありがとうございます……。でも、もうすぐ終わるところだったので……っ」
「嘘つけ。顔、ペンキついてるぞ」
「えっ!?」


