「え、入寮する? 突然どうしたの!?」
ガタタンッ、とお箸がご飯茶碗に当たる派手な音とともに、お兄ちゃんが目を丸くして身を乗り出した。
その勢いで、口に含んでいた白米が何粒か宙を舞う。
「お兄ちゃん、お米こっちにまで飛んでくるから気を付けてよ」
「だって気になるだろ! お前が急に家を出るなんて」
夕食のテーブルに広がる、焼き魚とお味噌汁の香ばしい匂い。
いつも通りの我が家の、いつも通りの賑やかな夕食風景。
だけど私の心臓は、特待生剥奪の危機と、あの強烈な『SSSクラス』たちの顔がフラッシュバックして、さっきからバクバクと高鳴りっぱなしだった。
「えっとー、来年度進級時の特待生スコアがなんかちょっと足りないみたいで……理事長先生じきじきに、ボランティアしろって言われちゃって」
「聖ステラ学園の寮ってめちゃくちゃ高いんじゃないの!?」
今度はパート帰りのエプロン姿のお母さんが、お玉を握ったまま目を剥いた。
お父さんも、お椀を片手にメガネの奥の目を鋭く光らせる。
そりゃそうだ。
セレブ御用達の学園の寮なんて、普通に暮らしたら一ヶ月の家賃だけで我が家の生活費が吹き飛ぶ。
「ボランティアする代わりに、寮費はタダなんだって! 土日は帰って来るし、ちゃんと三食ついてくるから、考えようによっては今よりも安上がりかも」
「……本当にボランティアだけでいいのか? 騙されてないか、陽菜」
お父さんが心配そうに眉をひそめる。
(ごめんねお父さん、お兄ちゃん……。本当は、私生活が完全に崩壊したワガママな天才イケメン3人の『専属お世話係』として、ゴミ屋敷みたいな一軒家に住み込みで働くなんて、口が裂けても言えない……!)
「大丈夫、大丈夫! ちょっとした書類の整理とか、共有スペースのモップ掛けくらいだから!」
私は胸を張って、満面の笑みを作ってみせた。
すべては、私の大学進学と、この温かい森下家の家計を守るため。
――こうして私は、着替えと愛用のエプロンをボストンバッグに詰め込んで、あの悪魔たちの棲み処へと足を踏み入れることになったのだった。
ガタタンッ、とお箸がご飯茶碗に当たる派手な音とともに、お兄ちゃんが目を丸くして身を乗り出した。
その勢いで、口に含んでいた白米が何粒か宙を舞う。
「お兄ちゃん、お米こっちにまで飛んでくるから気を付けてよ」
「だって気になるだろ! お前が急に家を出るなんて」
夕食のテーブルに広がる、焼き魚とお味噌汁の香ばしい匂い。
いつも通りの我が家の、いつも通りの賑やかな夕食風景。
だけど私の心臓は、特待生剥奪の危機と、あの強烈な『SSSクラス』たちの顔がフラッシュバックして、さっきからバクバクと高鳴りっぱなしだった。
「えっとー、来年度進級時の特待生スコアがなんかちょっと足りないみたいで……理事長先生じきじきに、ボランティアしろって言われちゃって」
「聖ステラ学園の寮ってめちゃくちゃ高いんじゃないの!?」
今度はパート帰りのエプロン姿のお母さんが、お玉を握ったまま目を剥いた。
お父さんも、お椀を片手にメガネの奥の目を鋭く光らせる。
そりゃそうだ。
セレブ御用達の学園の寮なんて、普通に暮らしたら一ヶ月の家賃だけで我が家の生活費が吹き飛ぶ。
「ボランティアする代わりに、寮費はタダなんだって! 土日は帰って来るし、ちゃんと三食ついてくるから、考えようによっては今よりも安上がりかも」
「……本当にボランティアだけでいいのか? 騙されてないか、陽菜」
お父さんが心配そうに眉をひそめる。
(ごめんねお父さん、お兄ちゃん……。本当は、私生活が完全に崩壊したワガママな天才イケメン3人の『専属お世話係』として、ゴミ屋敷みたいな一軒家に住み込みで働くなんて、口が裂けても言えない……!)
「大丈夫、大丈夫! ちょっとした書類の整理とか、共有スペースのモップ掛けくらいだから!」
私は胸を張って、満面の笑みを作ってみせた。
すべては、私の大学進学と、この温かい森下家の家計を守るため。
――こうして私は、着替えと愛用のエプロンをボストンバッグに詰め込んで、あの悪魔たちの棲み処へと足を踏み入れることになったのだった。


