そして、その日の昼休み――。
教室で、私が友達と購買のパンを食べようとしていた時のことだった。
ガラッ……!!
教室の前扉が静かに開いた瞬間、ざわついていた1年生教室の空気がピキッと氷結した。
「え……? 嘘でしょ、なんで……」
「2年生の……SSSクラスの朔様が、なんで1年の教室に……!?」
悲鳴のような囁き声が広がる中、朔先輩は周囲の視線なんて一切視界に入っていない様子で、真っ直ぐ私の席へと歩いてきた。
その手には、重厚な二段重ねの漆塗りのお重。
「陽菜。昼飯だ」
「さ、朔先輩!? ここ、1年生の教室ですよ!? どうしてここに……っ!?」
「お前の弁当を作らせてきた。……ほら、席空けろ」
当然のように私の隣の席の椅子を引いて腰掛けると、蓋をパカッと開けた。
中には、プロのシェフが作ったような色鮮やかな肉料理やエビチリ、そしてハート型の卵焼き!
「えっ……これ……!?」
「俺の家のシェフに作らせた。……あー、口開けろ。お世話係の仕事だ」
お重から高級なローストビーフを箸でつまむと、全クラスメイトが見守る中で、私の口元へと差し出してくる。
「っ……!? む、無理です! みんな見てます! 恥ずかしすぎて死んじゃいます!」
「だーめ。食うまで逃がさないぞ」
ドSな瞳が「拒否は許さない」と物語っている。
観念した私は、真っ赤な顔をしておずおずと口を開けた。
「ん……っ」
「……よくできました」
パクッと食べさせられた瞬間、教室中から『ギャアアアぁぁぁっ!!』という女子たちの黄色い大悲鳴が巻き起こる!
「なにあれーっ!? 朔様がお世話してるの!?」
「完全に甘やかされてる……! 陽菜ちゃんずるすぎるーっ!」
周りの視線と歓声で顔が爆発しそうな私を横目に、朔先輩は満足そうに口元を緩め、私の頭をポンポンと優しく撫でた。
「学年が違おうが、校舎が違おうが関係ない。お前は俺の特別な女の子だ。……午後も、しっかり頑張れよ」


