これまでのお世話係たちが三日と持たずに辞めた理由が、一瞬で分かった。
私生活が崩壊しているくせに、プライドだけは超一流で、他人を全く信用していないんだ。
俺たちの神聖な空間に、のこのこ他人が入って来るなーって感じ?
「ちょっと、そこのチャラ男先輩と、腹黒天使先輩」
私は、頭の中でプツンと何かが切れる音がした。
腰に手を当て、3人を順番に見据える。
「学校では完璧なフリをしてるみたいですけど、この部屋の惨状は何ですか? 片付けもできない、私の作ったチャーハンを餌付けされた野良猫みたいにがっつく、挨拶もまともにできない……」
驚愕の表情を浮かべる3人を前に、私は一歩も引かずに言い放った。
「あなたたち、学校では最高峰の『SSSクラス』かもしれないですけど――」
私は人差し指を突きつける。
「寮では、ただの『SSSクラスの落ちこぼれ』ですからね! ということで、今日からお世話係を担当する、森下陽菜です! よろしくおねがいしま、す?」
シン、と静まり返るリビング。
誰も口を開かない。
生徒会長の朔先輩すら、目を見開いて私を凝視している。
(あ……。やっちゃった。これで確実に特待生クビだ……!)
自分の怒りに任せた大暴言に、私は一瞬で青ざめた。
しかし、その沈黙を破ったのは、朔先輩の低く、楽しそうな笑い声だった。
「……ふっ、あははは! 面白い。俺たちを『落ちこぼれ』呼ばわりしたやつ、お前が初めてだよ」
朔先輩は立ち上がると、私の目の前にすっと顔を近づけた。
心臓が跳ね上がるほどの至近距離。
「決定。お前、不合格にするのやめたわ。俺たちの『専属お世話係』として、ここで生き残りなよ」
こうして、私の波乱万丈な「ロイヤル棟」でのお世話係ライフが、幕を開けたのだった。



