「ねえ、陽菜。……本当に寮生活、大丈夫? 意悪な子にいじめられたり、変な人にからかわれたりしてない?」
「っ……!?」
お母さんの鋭い母の勘に、心臓が跳ね上がる。
(い、いじめ……!? 上履き隠されたり理科室に閉じ込められたりしたなんて、口が裂けても言えない……っ!)
でも、私の脳裏に浮かんだのは、嫌がらせの恐怖なんかじゃなくて……。
朝、朔先輩のベッドで目を覚ましたときのこと。
「お前は俺の特別な女の子だろ」って耳元で囁かれながらバックハグされたこと。
「プロデュースしてあげる!」って目を輝かせてくれた藍里先輩や、こっそり高級スイーツをくれた蓮先輩のこと――。
(あ、ダメ……! 色々思い出しちゃった……っ!)
「ひ、引きこもられたり……い、いじめなんて、全然! 全然されてないよっ! みんな、すごく……すごく良くしてくれて……っ!」
カッと顔が一瞬で沸騰して、真っ赤になってしまう。
両手で赤くなった頬を押さえて慌てまくる私を見て、お母さんは一瞬きょとんとしたけれど、すぐに柔らかい笑顔を浮かべた。
「ふふ、そう。……なんだか、すごく楽しそうで良かったわ」
「な、なんでもないからね!? 本当に楽しんだから!」
お父さんとお兄ちゃんは「? 美味しいものでも食べさせてもらってんのか?」なんて首をかしげている。
最高の家族。
私の自慢の居場所。
やっぱり、この温かい家を守るためにも、私は聖ステラ学園で負けるわけにはいかないんだ。


