私の涙を親指でそっと拭った瞬間、先輩の身体がピキリと強張った。
「……誰に、やられたのか言え」
先輩の声から、完全に温度が消えた。
地を這うような、聞いたこともないほど怒りに満ちた静かな声。
その瞳の奥には、すべてを焼き尽くさんばかりの漆黒の炎がメラメラと燃え盛っている。
学園の『神』が、明確に、特定の誰かに対してブチギレているのが分かった。
「せ、先輩、私は大丈夫です……! 特待生のスコアに響いちゃうから、問題にしないで……」
お世話係の契約がバレたら、先輩たちにも迷惑がかかる。
そう言って首を横に振る私を見て、朔先輩はギリ、と奥歯を噛み締めた。
「ふざけるな……! スコアがどうした、特待生がなんだ! お前がこんな目に遭わされて、黙っていられるわけがないだろうが……っ!」
初めて見る、荒々しい感情を剥き出しにした先輩の姿に息を呑む。
先輩は私を壊れ物を扱うように、お姫様抱っこでふわりと抱き上げた。
「これ以上、俺の所有物に指一本でも触れる奴は、誰であろうとこの学園から叩き出す」


