何かが激しく破壊される音。
外側から頑丈に巻き付けられていたはずの金属チェーンが、悲鳴を上げて千切れ飛ぶ。
「……陽菜っ!」
暗闇を引き裂いて飛び込んできたのは、息を激しく切らした、あの聞き慣れた低い声。
理科室の扉を文字通り蹴破って現れた人影は、迷うことなく真っ直ぐに、床にへたり込む私へと駆け寄ってくる。
「朔、先輩……? うそ……っ」
「陽菜……! 良かった、無事か……っ!」
ドサッと膝をつき、私の肩を折れそうなほど強い力で抱きしめる。
制服のネクタイは大きく緩み、流れるような黒髪は雨と汗で額に張り付いている。
細身に見えて、私を包み込む腕は驚くほど固くて、熱い。
「寒かっ、た……。暗くて、なにも……っ」
「すまない、見つけるのが遅くなった。……もう大丈夫だ、俺がここにいる」
先輩の大きくて温かい手のひらが、私の冷たい頬にそっと触れる。
落ち着くシトラスの匂いが、先輩の激しい体温と共に私の全身を包み込む。
張り詰めていた涙が堰を切ったように溢れ出した。


