(え……? この人って、まさか……生徒会長の一ノ瀬(いちのせ)朔(さく)……先輩!?)
学校ではいつも完璧な三つ揃いの制服を着こなし、冷え切った瞳で生徒たちを平伏させている、あの学園の絶対君主。
冷酷無比で、他人に一切の隙を見せないと言われている『神』のような存在。
その一ノ瀬先輩が、今はヨレヨレの灰色ジャージを着て、床に転がっている。
「うぅ……」
「せ、先輩!? しっかりしてください!」
私が揺さぶると、先輩はうっすらと長い睫毛を持ち上げ、鋭い……いや、ひどく眠そうな、とろんとした瞳で私を見つめた。
そして、信じられないことに、私のジャージの裾をギュッと掴んできたのだ。
「……だれ……。腹減った……死ぬ……」
「えっ?」
「メシ……。なんか作れ……。あと、うるさいから静かに起こせ……」
そのまま、私の膝にコロンと頭を乗せて、再び目を閉じてしまう。
ぐい、と強い力で腰に巻き付いてくるんですけどー!
手はやたらと大きくて、男の子の熱い体温が伝わってくる。
ほんのりと爽やかなシトラスの香水かな?
甘い匂いが鼻をかすめて、私の心臓がドクンと跳ね上がった。
「えーえーえーーーと!?」
学校でのあの超こわい神サマ俺サマ生徒会長サマオーラは、どこへ行っちゃったの!?
「うぅ……メシ……」
私の膝の上で、うわ言のように呟き続ける朔先輩。
普段のあの、近寄り難いオーラは微塵もない。
ただの飢えた野良猫みたい。
「わかりました! わかりましたから、一回どいてください! 今すぐ何か作ります!」



