その瞬間、先輩の肩がビクッと跳ねた。
カラメルのほろ苦さと、濃厚な卵の甘みが口いっぱいに広がったかな?
一口食べた瞬間から、先輩の手が止まらなくなった。
「……あま、い。でも、ちょっと苦い……」
「カラメルを少し焦がして、大人な味にしたんです。どうですか?」
「……めちゃくちゃ美味しい。今まで食べたどこの高級ホテルのスイーツよりも、なんか、落ち着く味がする……」
ペロリと平らげた藍里先輩は、空になった器を見つめた後、ぽつりと言った。
「僕ね、小さい頃から『天才』って言われて、お父さんからも仕事の道具としてしか見られてなかったんだ。何かを達成しても、当たり前だって言われるだけで……。だから、僕が悪いことをした時に、あんなに必死に怒ってくれたの、陽菜が初めてだよ」
いつも強気なハッカーの仮面の下にある、ただの寂しがり屋な男の子の素顔。
モニターの青い光に照らされた藍里先輩の横顔は、とても小さく見えた。


