今まで、彼の天才ぶりに怯えるか、あるいはその甘いマスクに群がる大人ばかりだったのだろう。
面と向かって「寂しい構ってちゃん」と本気で叱られたことなんて、絶対にないはずだ。
「……ふーん。陽菜って、本当に馬鹿だね。僕を怒ったら、特待生の資格なんて一瞬で消せるのに」
「う……そ、その時は先輩の部屋の片付け、一生してあげませんからね!」
私がぷいっとそっぽを向くと、藍里先輩はしばらく言葉を失っていたが、やがて「……変なやつ」と小さく毒づいて、自分の部屋へ戻ってしまった。
やってしまった、と少し後悔したのはその日の夜のこと。
いくらなんでも言いすぎただろうか。
でも、どうしても放っておけなかったのだ。


