幼い頃から天才と持て囃され、大人の裏の顔をその高い知能で見抜いてきた藍里先輩。
彼にとって、周りの人間は「簡単にコントロールできる駒」でしかなかったのだろう。だからこそ、こうしてくだらない悪戯をして、世界の反応を冷めた目で見つめている。
私は、ゆっくりと立ち上がって、藍里先輩の目の前に立った。
そして、そのおでこを指先で、ペシッ、と軽くデコピンした。
「痛っ……! 何するの、陽菜」
驚いて丸い目をさらに丸くする藍里先輩に、私は腰に手を当てて、本気で叱り飛ばした。
「先輩がどれだけ天才か知りませんけど、その頭脳は人が困るためじゃなくて、人を助けるために使った方がかっこいいです! 先生たちがどれだけ焦って、どれだけ無駄な仕事を増やされたか考えたことがありますか? そんな寂しい暇つぶし、かっこ悪いと思います」
「……さび、しい……?」
藍里先輩が呆然と呟く。
「退屈だからって他人に迷惑をかけて、自分の存在を確かめるなんて、ただの構ってちゃんです。そんなことしなくたって、先輩はここにいるじゃないですか」


