「……あぁ、わかってる。今度の雑誌のモデルの件だろ。どうせ親父の会社に媚び売りたいだけなんだから、適当にそっちで選んどいて。……あいつら、俺の顔と実家の肩書きしか見てないからさあ」
低く、ひどく冷めきった声。
普段のチャラついたトーンとは全く違う、深い人間不信が滲み出るような声だった。
実家が大手芸能系のビジネスを牛耳る超大財閥。
幼い頃から、自分に近づいてくる人間が「自分自身」ではなく「実家の力」や「利用価値」しか見ていない環境で育ってきたのかも……。
だからこそ、お世話係として突然やってきた私のことも、「どうせ金目当ての売名行為だろ」と警戒し、冷たくあしらうことで自分を守っていたとか……。
(そっか……。蓮先輩も、いろいろ抱えてるんだな)
なんだか胸がツンと痛んで、私は洗濯カゴを抱え直した。
私にできることは、特待生として生き残るために、そして彼らにおいしいご飯を食べてもらうために、ただひたすらに「お世話係」の仕事を全うすることだけだ。
その日の夕食。
私は、蓮先輩が実は「辛いもの」や「刺激の強いもの」が苦手で、意外と優しい和食が好きなことを、食べ残しの減り具合から分析していた。
今夜のメニューは、出汁をたっぷりきかせた『肉じゃが』と、ほかほかの炊き込みご飯、それからお豆腐の味噌汁だ。
「ご飯できましたよー!」


