しまった――と思ったときには遅かった。
鋭い、氷のような視線が一瞬で私を射抜く。
「面白い」と笑っていた柔らかさは消え失せ、本物の絶対君主の目がそこにあった。
「あ、あの! すみません! ちょっと喉が渇いて、お水を飲みに……!」
慌てて両手を振って弁解する私に、先輩は一瞬だけ目を見張った。
だけど、すぐにその鋭い双眸が、ふっと意地悪そうに細められる。
「なんだ、お前か」
先輩はスマホをテーブルに放り出すと、ソファの背もたれに腕を回し、とろんとした眠そうな目に、いたずらっぽい光を灯した。
「夜更かしは肌に悪いだろうが。あ……それとも、初日から俺に夜這いでもかけに来た?」
「なっ……ななな、何言ってるんですかバカ先輩! 違います!!」
一瞬で顔が沸騰した。
深夜の静寂の中に、私の心臓の音がドクドクと大きく響き渡る。
そんな私を見て、先輩は「くくっ」と喉の奥で低く楽しそうに笑った。
その低音の響きが、静かなリビングに心地よく溶けていく。
「冗談だよ。水はあっち」
先輩が顎でキッチンを示す。


