(……うん、お世話係の最後の手紙としては、これで完璧!)
おじい様に言われたことや、お見合いのことなんて、一文字も書かない。
本当は「先輩の隣にいたかった」「離れたくない」なんて……そんなこと、絶対に知られちゃいけないから。
わざとお世話係らしく明るく書いた手紙の文字が、ポツポツと落ちた涙で少しだけ滲んでしまった。
「……冷める前に、食べてくれますように」
ボストンバッグを肩にかけて、玄関に向かう。
ピカピカに磨いた廊下も、毎日みんなでワイワイ言い合いをしたリビングも、全部がキラキラした宝物みたいな思い出だ。
あのドSでワガママで、でも誰よりも不器用で優しい先輩の背中を、もう二度とこんな近くからは見られないなんて。
「……さよなら。王子様たち。ありがとうございました!」
誰もいないロイヤル棟に小さな声で別れを告げて、私はドアを開けた。
外は、凍えるような冬の夜。
落ちてきた冷たい雪が、ぽろぽろとこぼれる涙と一緒に、私の頬を濡らしていった。
明日は、いよいよ二学期の終業式。
そして、ペアでの参加が必須の『クリスマス・プロム』の日だ。
ま、私にはもうなーんにも関係ないけど……。
めそめそしちゃだめだ!
明日は――クラスの子誘ってカラオケでも行こうかな?
特待生としてもお世話係としても、めちゃくちゃ頑張って、突っ走ってきたもん。
ちょっとくらいのご褒美タイムしたって、怒られないよね?


