足取りも軽くロイヤル棟に帰ると、リビングでは朔先輩たちがくつろいでいた。
「ただいま帰りましたーっ!」
勢いよくドアを開けると、ソファで分厚い洋書を読んでいた朔先輩が顔を上げる。
「うるさいぞ陽菜。……なんだ、やけにニヤニヤして」
「ふふふっ、聞いて驚いてください! 私、二学期の特待生スコア、見事『満点』をもらっちゃいました!」
私がエッヘンと胸を張ってピースサインを作ると、キッチンでコーヒーを淹れていた蓮先輩と、クッションを抱えていた藍里先輩もパッと顔を輝かせた。
「マジ!? やるじゃん陽菜! これで堂々と俺たちの専属でいられるね。よーし、今日は俺のおごりで高級デリバリーでも頼むか!」
「おめでとー! 陽菜ちゃんが毎日遅くまで勉強も家事も頑張ってるの、僕たち一番近くで見てたもんね」
「えへへ、ありがとうございます! あ、デリバリーはダメですよ! 今日はお祝いに、夕飯は私の手作りでみんなの大好きな特製煮込みハンバーグにしますからね!」
ウキウキでキッチンへ向かおうとした私。しかし、すれ違いざまに朔先輩に腕をスッと掴まれ、ぽすっとソファに引き寄せられた。
「ひゃっ! さ、朔先輩?」
「……よく頑張ったな。俺の自慢のお世話係」
耳元で囁かれた低くて甘い声と、頭をポンポンと優しく撫でる大きな手のひらの感触。
普段は素直じゃない絶対君主からのストレートな褒め言葉に、顔がカァッと熱くなる。
理事長さんからの満点の評価よりも、先輩からのこの言葉の方が、何倍も私を幸せな気持ちにしてくれた。
こんな幸せで、甘くて、賑やかなロイヤル棟の日常が、ずっと続いていくんだ。
――そう、信じて疑わなかった。
しかし、この『満点の特待生スコア』という完璧すぎる評価が、皮肉にも、学園の最大スポンサーである一ノ瀬家の『あのお方』の目に留まるキッカケになってしまうとは、この時の私はまだ知る由もなかったのだ。


