「――こんな所で一人で何笑ってんだ。俺の専属メイド」
「ひゃっ!?」
暗がりから突然現れた影に、私はビクッと肩を揺らした。
そこに立っていたのは、後夜祭の喧騒から抜け出してきたらしい朔先輩。
純白の軍服衣装のネクタイを少し緩め、月明かりを背に受けた姿は、ため息が出るほど美しい。
「さ、朔先輩! どうしてここに……って、優勝おめでとうございます! やっぱりα組はすごかったです」
私が素直に拍手を送ると、先輩はふっと目を細めて歩み寄り、私の鼻先を軽く指ではじいた。
「いったっ!?」
「お前らもな。……『これからも期待したいで賞』だっけ? お前らしくて、いい賞じゃん。お疲れ、陽菜」
「先輩……っ」
頭をポンポンと優しく撫でられて、嬉しさと気恥ずかしさで胸がいっぱいになる。
だけど、先輩の瞳が不意にギラリと、肉食獣のような危険な光を帯びた。
「……で? 約束、覚えてるよな」
「や、約束……?」
「勝ったら、俺の言うことを『何でも一つ聞く』。……絶対君主との契約に不履行はねえぞ」
「うっ……! も、もちろんです! お世話係として、肩揉みでもお使いでもなんでも――」
「そんなもん要らねぇよ」


