オタクな秘書の攻略方法〜来る者拒まず去る者追わずだった同期に一途に溺愛される

「神尾、今日の役員会議のプレゼン、素晴らしかったぞ! 常務も大絶賛だった」
「ありがとうございます。資料のデータに助けられました」
午前11時30分。役員会議を終えた蓮は、廊下で上司と別れた後、すっと表情を消した。
会議中、常務から「データが実に見やすい」と褒められたのは、間違いなく真白が貼ってくれた付箋と、最新データへの差し替えのおかげだった。
(借りは作らない主義だ。……それに)
蓮は、24階の役員フロアの奥にある秘書課のデスクへと、静かに視線を向けた。
パーテーション越しに見える乾真白は、いつものように背筋をぴしりと伸ばし、電話対応をこなしている。
完璧な、付け入る隙のない「鉄壁の秘書」。
だが、今の蓮にはわかる。
あの硬い仮面の下に、ゲームのガチャに一喜一憂し、なりふり構わず必死になって、だけど他人のミスを黙ってフォローする「お人好しで、少し不器用で、愛らしい乾真白」が隠れていることを。
「……面白い」
蓮はポケットに手を突っ込み、小さく口角を上げた。
これまで、数多の女性が蓮の完璧な外面に惹かれ、すり寄ってきた。だが、どの女性も内面を見れば底が浅く、すぐに飽きてしまった。
けれど、乾真白は違う。
暴けば暴くほど、見たことのないギャップが飛び出してくる。
人間観察が得意な蓮のハンターとしての本能が、静かに、しかし確実に獲物を定めた。
(ただのお礼じゃ、あの負けず嫌いは受け取らないだろうな。……なら、彼女の『一番欲しいもの』で攻めるか)
蓮はスマホを取り出すと、自身のプライベート用の端末で、ある「検索」を始めた。
彼の同期である佐伯が見たら「お前がそんなものを調べるなんて、明日は槍が降るぞ」と腰を抜かすような、彼女が熱中していたアニメ・ゲーム関連の情報を。