二人が初めての甘い週末を過ごしてから二週間。
社内での二人の絆は、誰にも見えない水面下で、より深く熱いものへと育まれていた。
そして金曜日の夜。
都内の一流ホテルの一角にある大宴会場で、大手企業が集う「新プロジェクト発足記念合同レセプション」が開催されていた。
「――常務、そちらのグラスをお持ちいたします」
「ああ、乾さん、いつもすまないね」
会場の壁際、常務のすぐ斜め後ろに控える真白は、いつも通り完璧な所作で随行秘書としての任務をこなしていた。
だが今夜の彼女は、社内の誰もが息を呑むほどに美しかった。
纏っているのは、蓮の瞳の色と同じ、深いグレーのベアトップドレス。
タイトなシルエットが真白のしなやかで華奢なボディラインを強調し、露出した白い鎖骨や肩のラインが、会場のシャンデリアの光を浴びて陶器のように輝いている。
普段はきっちりとまとめている黒髪も、今夜はゆるくハーフアップにされ、大人の女性としての艶やかな色香を放っていた。
(……あ。目が合っちゃった、かも)
常務が他社の役員と談笑する合間、真白は会場の少し離れた場所に視線を向けた。
そこには、営業一課のエースとして、他社の重役たちに囲まれて堂々とグラスを傾ける蓮の姿があった。
今夜の彼は、仕立ての良い黒のスリーピーススーツを完璧に着こなし、前髪を少し上げた隙のないセット。社内向けの上品な笑みを浮かべ、圧倒的なオーラで周囲を魅了している。
誰もが羨むようなハイスペックな男。
だが、蓮の灰色の瞳は、会話の合間に何度も、会場の反対側に立つ真白を捉えていた。
周囲にバレないほどのほんの一瞬。
蓮は、他の男たちが真白の露出した肩や背中に熱っぽい視線を送るたびに、瞳の奥の温度をすっと凍りつかせるように冷たく尖らせていた。その「隠しきれない独占欲」が視線を通して伝わってくる。
(蓮さん、怒ってる……。他の人に私が見られるのが、そんなに嫌なのかな)
真白は恥ずかしさと、背筋がゾクゾクするような甘い充足感で胸がいっぱいになり、そっと視線を逸らした。
「おい、神尾。さっきから視線が固定されてるぞ。気持ちはわかるが、今は取引先の専務と話してる最中だ、ポーカーフェイスを維持しろ」
隣に立つ佐伯が、グラスで口元を隠しながら、極小の声で蓮に突っ込みを入れた。
「……分かっている。だが、あのドレスは露出が多すぎる。選んだのは誰だ」
「常務の奥様が選んでくださったらしいぞ。お前、今にも乾さんに自分のジャケットを羽織らせに走り出しそうな顔してるからな。落ち着けって」
「……あとで、絶対に仕置きが必要だな」
低く掠れた蓮の声には、仕事中の王子様のものとは思えない、ドロリとした熱情が混ざっていた。
パーティーの中盤。歓談の時間がピークを迎え、会場内が賑やかさに包まれる中、真白は常務から「少し休んでおいで」と促され、テラスへと続く静かな廊下へと足を向けた。
火照った体を冷まそうと、人気の少ないバルコニーへ出ようとしたその瞬間。
「――捕まえた」
不意に背後から、強い力で腕を引かれた。
短い悲鳴を上げる間もなく、真白は会場の影にある、暗いVIP用控室のドアの中へと強引に引きずり込まれた。
バタン、と静かにドアが閉まり、ロックされる。
暗がりの部屋の中で、真白の背中が壁に優しく押し付けられた。
「れ、蓮さ――っ」
「……真白」
名前を呼びきる前に、蓮の熱い唇が真白の言葉を塞いだ。
それは、焦れるような独占欲に満ちた、激しい口づけだった。
蓮は真白の細い腰をグッと引き寄せ、ドレス越しにお互いの体温がぴったりと重なり合う。
「んむ……っ、ふ、あ……っ、蓮さん……だめ、誰か来たら……」
「来ない。佐伯に入り口を塞がせてる。……それより、さっきから色んな男が真白の肩を見てた。……俺以外の男に、そんな格好見せたくない」
蓮は真白の鎖骨から肩へと、マークをつけるように深く、熱いキスを落とした。
「あっ……ん……っ、はぅ……蓮、さん……っ、くすぐった、い……」
「今日帰ったら、このドレスを脱がせて、俺の跡で全部上書きしてあげる……覚悟してて」
耳元で低く囁かれ、真白の身体は一瞬にして甘い微熱に包まれる。
しかし、この密やかな情熱の部屋の外で、二人の運命を揺るがす「新たな影」が、すでに蓮を見定めて動き出していたのだった――。
社内での二人の絆は、誰にも見えない水面下で、より深く熱いものへと育まれていた。
そして金曜日の夜。
都内の一流ホテルの一角にある大宴会場で、大手企業が集う「新プロジェクト発足記念合同レセプション」が開催されていた。
「――常務、そちらのグラスをお持ちいたします」
「ああ、乾さん、いつもすまないね」
会場の壁際、常務のすぐ斜め後ろに控える真白は、いつも通り完璧な所作で随行秘書としての任務をこなしていた。
だが今夜の彼女は、社内の誰もが息を呑むほどに美しかった。
纏っているのは、蓮の瞳の色と同じ、深いグレーのベアトップドレス。
タイトなシルエットが真白のしなやかで華奢なボディラインを強調し、露出した白い鎖骨や肩のラインが、会場のシャンデリアの光を浴びて陶器のように輝いている。
普段はきっちりとまとめている黒髪も、今夜はゆるくハーフアップにされ、大人の女性としての艶やかな色香を放っていた。
(……あ。目が合っちゃった、かも)
常務が他社の役員と談笑する合間、真白は会場の少し離れた場所に視線を向けた。
そこには、営業一課のエースとして、他社の重役たちに囲まれて堂々とグラスを傾ける蓮の姿があった。
今夜の彼は、仕立ての良い黒のスリーピーススーツを完璧に着こなし、前髪を少し上げた隙のないセット。社内向けの上品な笑みを浮かべ、圧倒的なオーラで周囲を魅了している。
誰もが羨むようなハイスペックな男。
だが、蓮の灰色の瞳は、会話の合間に何度も、会場の反対側に立つ真白を捉えていた。
周囲にバレないほどのほんの一瞬。
蓮は、他の男たちが真白の露出した肩や背中に熱っぽい視線を送るたびに、瞳の奥の温度をすっと凍りつかせるように冷たく尖らせていた。その「隠しきれない独占欲」が視線を通して伝わってくる。
(蓮さん、怒ってる……。他の人に私が見られるのが、そんなに嫌なのかな)
真白は恥ずかしさと、背筋がゾクゾクするような甘い充足感で胸がいっぱいになり、そっと視線を逸らした。
「おい、神尾。さっきから視線が固定されてるぞ。気持ちはわかるが、今は取引先の専務と話してる最中だ、ポーカーフェイスを維持しろ」
隣に立つ佐伯が、グラスで口元を隠しながら、極小の声で蓮に突っ込みを入れた。
「……分かっている。だが、あのドレスは露出が多すぎる。選んだのは誰だ」
「常務の奥様が選んでくださったらしいぞ。お前、今にも乾さんに自分のジャケットを羽織らせに走り出しそうな顔してるからな。落ち着けって」
「……あとで、絶対に仕置きが必要だな」
低く掠れた蓮の声には、仕事中の王子様のものとは思えない、ドロリとした熱情が混ざっていた。
パーティーの中盤。歓談の時間がピークを迎え、会場内が賑やかさに包まれる中、真白は常務から「少し休んでおいで」と促され、テラスへと続く静かな廊下へと足を向けた。
火照った体を冷まそうと、人気の少ないバルコニーへ出ようとしたその瞬間。
「――捕まえた」
不意に背後から、強い力で腕を引かれた。
短い悲鳴を上げる間もなく、真白は会場の影にある、暗いVIP用控室のドアの中へと強引に引きずり込まれた。
バタン、と静かにドアが閉まり、ロックされる。
暗がりの部屋の中で、真白の背中が壁に優しく押し付けられた。
「れ、蓮さ――っ」
「……真白」
名前を呼びきる前に、蓮の熱い唇が真白の言葉を塞いだ。
それは、焦れるような独占欲に満ちた、激しい口づけだった。
蓮は真白の細い腰をグッと引き寄せ、ドレス越しにお互いの体温がぴったりと重なり合う。
「んむ……っ、ふ、あ……っ、蓮さん……だめ、誰か来たら……」
「来ない。佐伯に入り口を塞がせてる。……それより、さっきから色んな男が真白の肩を見てた。……俺以外の男に、そんな格好見せたくない」
蓮は真白の鎖骨から肩へと、マークをつけるように深く、熱いキスを落とした。
「あっ……ん……っ、はぅ……蓮、さん……っ、くすぐった、い……」
「今日帰ったら、このドレスを脱がせて、俺の跡で全部上書きしてあげる……覚悟してて」
耳元で低く囁かれ、真白の身体は一瞬にして甘い微熱に包まれる。
しかし、この密やかな情熱の部屋の外で、二人の運命を揺るがす「新たな影」が、すでに蓮を見定めて動き出していたのだった――。



