オタクな秘書の攻略方法〜来る者拒まず去る者追わずだった同期に一途に溺愛される

カーテンの隙間から差し込む、柔らかな土曜日の朝の光。
真白がゆっくりと意識を浮上させると、全身が心地よい気だるさと、圧倒的な「熱」に包まれていることに気づいた。
「……ふ、ぁ……」
小さく息を吐いて体を動かそうとしたが、びくともしない。
それもそのはず、真白の体は、背後から蓮の大きな体にすっぽりと包み込まれるように抱きすくめられていた。
腰に回された太い腕は、まるで愛しい宝物を誰にも渡さないと主張するように、驚くほど強固に自分を固定している。
真白のうなじのあたりには、蓮の規則正しく、少し熱い寝息が吹きかかっていた。
(本当に……昨日、私、蓮さんと結ばれたんだ……)
思い出すだけで、全身の血が一気に沸騰しそうになる。
自分の中にあった頑なな境界線を超えて、彼のすべてを受け入れた夜。
シーツの擦れる音、熱い吐息、何度も名前を呼ばれて重ねた温度――。
「……真白」
耳元で、低く掠れた甘い声が響いた。
いつの間にか目を覚ましていた蓮が、真白の首筋にすりすりと愛おしそうに頬を寄せてくる。
「蓮さん、あの……おはようございます。ちょっと、苦しいです……」
「おはよう。……離さないよ。もう一歩もここから出さない」
「ひゃうっ……!」
蓮は腕の力をさらに強め、自分より二回りも小さな真白の体を胸の中にきつく閉じ込めた。
それどころか、長い脚まで真白の脚に絡め、本当に指一本動かせないほどの密着度で、全身に愛おしさを擦りつけてくる。
オフィスで見せるあの「営業部エース」の冷徹な姿はどこへやら、今の彼は、まるでお気に入りのぬいぐるみに執着する子供のように甘えきっていた。
「蓮さん、もう朝ですよ? 顔、洗いたいです……」
「やだ。真白が可愛すぎるのが悪い。……昨日、あんなに甘い声で俺の名前呼んでくれたのに、朝になったらまた『神尾さん』に戻るかと思って、心配で眠れなかった」
「う、嘘つき。ずっと気持ち良さそうに寝てたくせに……」
「嘘じゃない。ほら、見て」
蓮は真白の体を器用にくるりと仰向けに反転させると、上から覆い被さるようにして彼女を覗き込んだ。
微かに乱れた前髪の間から覗く灰色の瞳は、真白へのとろけるような愛着と、隠しきれない独占欲でうるうると濡れている。
「真白。もう一回、名前呼んで?」
「……れ、蓮さん」
「……っ、反則。可愛すぎる」
蓮はシーツに真白を押し込むようにして、その桜色の唇に何度も、小鳥が啄むような軽いキスを降らせた。おでこ、鼻先、頬、そして最後は吸い付くような深い口づけ。
「ん……っ、ふ……れん、さん、息が……」
ようやく唇が離れたとき、真白の息はすっかり乱れ、肌は薄桃色に染まっていた。
それを見つめる蓮の瞳に、再び昨日と同じ「熱い欲望」が宿るのを、真白は敏感に感じ取った。
「あの! お腹空きませんか!? 私、お腹空きました!」
これ以上ベッドの中にいたら、本当に食べられてしまう。
危機感を覚えた真白が必死に提案すると、蓮は一瞬だけ不満そうに眉を寄せたが、すぐにクスリと優しく笑った。
「そうだね。真白にたくさん体力使わせちゃったから、美味しいもの作ってあげる。……でも、キッチンに行く時も、俺から離れるの禁止ね」
「どうやって料理するんですか、それ……」
呆れる真白だったが、結局、蓮の特製オムレツが出来上がるまで、真白は彼のエプロンの紐を掴まされたまま、キッチンのすぐ横で見守る羽目になったのだった。
午後からは、予告通り二人でソファに並んでゲームの時間。
「よし、今度こそこのボス、クリアします!」
「うん、真白、後ろの雑魚敵は俺が全部引き受けるから、真白はボスの弱点だけ狙って」
真白は真剣な表情で、かつて誰もいない秘書課でガチャを回していた時と同じように、少し唇を尖らせてコントローラーを握りしめている。
隣に座る蓮は、ゲーム画面を見つつも、その視線の半分は真白の愛くるしい横顔に注がれていた。
「あ、危ない! 蓮さん、カバーお願いします!」
「任せて」
見事な連携プレイで強敵を撃破した瞬間、真白は「やりました!」と大喜びで蓮に向かって両手を広げた。
蓮は待ってましたとばかりに、彼女の小さな体をソファの上で抱き上げる。
「真白、すごい。さすが俺の秘書」
「ふふ、ゲームでも『秘書の鏡』ですから。……きゃっ!」
抱きしめられた勢いのまま、二人の体はソファの上に倒れ込んだ。
真白の上に覆い被さる蓮の体温が、一気に上がったのが分かった。ゲームのコントローラーが床に転がり、静かなリビングに二人の少し荒い呼吸だけが響く。
「……真白」
蓮の大きな手が、真白のTシャツの裾から入り込み、すべすべとした太ももを愛撫するように撫で上げていく。
朝よりも一段と深く、熱い欲望を孕んだ灰色の瞳が、真白の視線を絡め取って離さない。
「蓮、さん……また……?」
「うん。ゲームクリアのご褒美……じゃなくて、俺が真白を我慢できない。昨日、初めて重ねたばかりなのに、もう君の体温がないと生きていけないくらい、おかしくなってるんだ……」
蓮の長い指先が、真白の柔らかい肌を割り、昨日教え込まれたばかりの甘い震えを再び呼び覚ましていく。
「あ、っ……、ん……ふ、ぁ……」
「可愛い……真白、今度はもっと、俺に全部預けて……」
重ねられた唇から、甘く熱い微熱が溶け出していく。
休日の穏やかな光に満ちたリビングで、二人は昨日よりもさらに深く、貪り合うようにお互いのすべてを求め、再び甘美な愛の海へと沈んでいくのだった。