オタクな秘書の攻略方法〜来る者拒まず去る者追わずだった同期に一途に溺愛される

隣から聞こえる、規則的で小さな呼吸の音。
蓮は、薄暗い常夜灯の下で、自分の胸にぴったりと寄り添って眠る真白の横顔を静かに見つめていた。
貸した大きめのTシャツの中で、真白の華奢な体は驚くほど小さく収まっている。
その白く柔らかな肩をそっと抱き寄せると、彼女は夢うつつのまま「……れん、さん……」と小さく呟き、さらに蓮の体温を求めるように身を寄せてきた。
(愛おしい。……本当に、どうしようもないくらいに)
胸の奥が、熱いもので満たされていく。
これまで生きてきて、女性を抱いた翌朝にこれほど静かで、深く、満ち足りた幸福感に包まれたことなど一度もなかった。
同期入社でありながら、これまではすれ違いざまに挨拶を交わす程度だった乾真白。
社内では「秘書の鏡」と称され、完璧に仕事をこなす鉄壁の女性。
どこか遠い世界の存在のようだった彼女が、なぜ俺にとって、命を懸けても守りたい唯一無二の存在になったのか。
すべての始まりは、あの日、偶然通りかかった誰もいない秘書課での出来事だった。
いつも隙のないスーツに身を包み、冷徹な仮面を被っているはずの真白が、唇を尖らせながら必死の形相でスマホ画面をタップしていた。
スマホゲームのガチャを必死に回し、一喜一憂しているその姿。
「秘書の鏡」の裏側に隠された、あまりにも人間らしくて愛くるしいギャップに、俺の心は一瞬で奪われた。
そこからだ。気になり始めて、彼女の不器用な素顔に触れるたびに、底なしの底へ落ちていくように惹かれていった。
心が緑川の裏切りで壊れ、「来るもの拒まず去るもの追わず」のからっぽな関係を繰り返して自分を守っていた俺を、真白はその真っ直ぐな優しさで救い、凍りついた心を溶かしてくれた。
それなのに、俺の荒んだ過去が、緑川という悪意を通して彼女を深く傷つけてしまった。
『これからの神尾さんの時間は、1秒だって他の誰にも渡しません。私が、全部私のログで上書きしてあげます』
あの夜、泣きながらそう言って俺の不誠実な過去ごと抱きしめてくれた彼女の強さと、無償の愛。
そして、今夜――彼女はついに、心だけでなく、その清らかな身体のすべてを俺に預けてくれた。
初めて触れる男の身体に、怖いくらいに緊張して震えていた真白。
シーツの上に広がる黒髪と、薄桃色に上気していく白い肌。俺の指先が触れるたびに、ビクッと背中を跳ね上げ、涙を溜めて俺を見つめるその瞳の純粋さに、俺の理性は何度も焼き切れそうになった。
未経験の痛みに耐えながら、俺の背中に必死で爪を立てていた真白。
それが、俺を求める熱い質量に溶かされていくにつれて、女性としての本能を甘く開花させていった。
俺の手を握りしめ、掠れた声で何度も「蓮さん……っ、蓮さん……!」と俺の名前を呼ぶ彼女の、艶っぽく、狂おしいほど甘い喘ぎ声。
あの瞬間、俺の頭の中にいた過去の亡霊は、一瞬にして完全に消え去った。
ただ一人の女性の、最も純粋な「初めて」をこの手で優しく拓き、愛を注ぎ込み、一つに重なり合う圧倒的な快感。
身体の芯から震えるような、人生で初めて味わう本物の絶頂だった。
(真白……君が、俺を『男』にしてくれたんだ)
「……ん……」
ふいに、真白が眉を少し寄せて、身じろぎをした。
蓮は愛おしさに耐えかねて、彼女の額にそっと唇を寄せ、髪を優しく撫でる。
「大丈夫だよ、真白。俺はここにいる」
囁きながら抱きしめ直すと、真白は安心したように再び深い眠りへと落ちていった。
今、俺の腕の中にいるこの女性を、一生をかけて守り抜く。
彼女が俺の過去を思い出して、少しでも寂しい思いをすることがあるなら、その何百倍もの愛を、言葉と体温で毎日上書きしてみせる。
あの時、誰もいない秘書課で必死にガチャを回していた愛しい女の子。
彼女の手を二度と離さないと、蓮は静かな夜の中で、深く温かい未来を強く誓い続けていた。