オタクな秘書の攻略方法〜来る者拒まず去る者追わずだった同期に一途に溺愛される

何にも邪魔されない土曜日の午後、真白は蓮のマンションを訪れていた。
「――っ、真白……!」
玄関のドアを開けた瞬間、いつものスマートな佇まいはどこへやら、蓮はハーフコートを着たままの真白をきつく抱きしめた。
驚く真白を腕の中に閉じ込め、その首筋に深く顔を埋めて、愛おしさを噛み締めるように何度も深く呼吸を繰り返す。
「蓮さん……まだドアが開いてます」
「閉めるから、このまま……あと1分だけ待って」
その余裕のない甘え方に、真白は小さくクスリと笑った。
かつては、近づいてくる女性を冷たくあしらい、冷徹な仮面を被っていた男が、今は自分の一挙一動にこうして激しく揺さぶられている。
緑川から聞いた彼の過去の影は、もう真白を怯えさせるものではなくなっていた。目の前で心臓を早く脈打たせているこの温度こそが、今の彼の真実だからだ。
リビングに入り、二人でソファーに並んで腰掛ける。
蓮が淹れてくれた紅茶の湯気が、優しく部屋の中に広がっていく。
「真白」
蓮が真白の小さな手を両手で包み込み、少しだけ真面目な、けれどこの上なく優しい眼差しを向けた。
「もう二度と、君に悲しい涙は流させない。寂しいことも、嫉妬することも、俺に全部ぶつけてほしい。君が望むなら、毎日でも、俺の言葉と体温で君の不安を消し去るから」
「……蓮さん」
真白は、彼の温かい胸にそっとおでこを預けた。
彼の整った顔、その指先、髪の匂い。そのすべてが、かつて誰かのものだったかもしれない。けれど、今こうして彼を「蓮さん」と呼び、腕の中に収まっている自分は、間違いなく彼にとっての「唯一無二の特別」だ。
「……じゃあ、ひとつだけ、わがままを言ってもいいですか?」
「何でも言って。君の望みなら、世界中のどんなことでも叶える」
大袈裟なくらいに必死になる蓮に、真白はいたずらっぽく微笑んだ。
「今日は、あのゲームの難しいステージをクリアするまで、ずっと一緒に遊んでください。……それと、終わったら、蓮さんの手作りご飯が食べたいです」
「……っ、そんなことでいいの?」
蓮は拍子抜けしたように瞬きをした後、たまらなくなったように真白の頬を両手で包み込み、今度は唇へ、深く、深く、とろけるようなキスを落とした。
「いくらでも作るよ。ゲームも、君が飽きるまで一晩中付き合う」
「はい。ふふ、嬉しいです」
二人の間に漂う空気は、かつてのどの夜よりも甘く、そしてどこまでも平穏だった。