12階、営業一課のミーティングスペース。
真白がノートPCと資料を抱えて現れると、蓮はすでにそこで待っていた。
周囲には数人の営業部員が忙しそうに行き来している。
「乾さん、引き受けてくれてありがとうございます。頼りにしています」
蓮は非の打ち所がない、誰もが憧れる爽やかな笑顔で真白を迎えた。
「いいえ、常務のご指示ですので。乾真白、ただいまよりサポートに入らせていただきます。神尾さん」
真白は一礼し、あえてビジネスライクな態度を崩さない。
だが、蓮が差し出してきた資料の束を一緒に確認するために席を詰めた瞬間、ふたりの距離が急激に狭まった。
「今回のプロジェクトは、シンガポールの現地法人との連携が鍵になります。資料の英語翻訳と、役員向けのエグゼクティブ・サマリーの作成を、今日の17時までにお願いできますか?」
蓮は真白の目を見つめ、低い声で説明する。
「タイトなスケジュールですが、問題ありません」
「頼もしいな。……やっぱり、乾さんは仕事の時が一番綺麗だ」
最後の言葉は、周囲の雑音に紛れるほどの囁きだった。
真白の耳たぶが、みるみるうちに赤く染まっていく。
「……っ、私的な会話は慎んでください。仕事に集中します」
「すみません、つい本音が」
蓮は少しも悪びれる様子なく、ふっと楽しそうに微笑んだ。
その表情は、誰にでも見せる営業スマイルではなく、どこか少年のような、真白だけに向ける特別な甘い笑顔だった。
真白はキーボードを叩く指先にいつも以上の力を込め、必死に自分のペースを保とうとするのだった。
真白がノートPCと資料を抱えて現れると、蓮はすでにそこで待っていた。
周囲には数人の営業部員が忙しそうに行き来している。
「乾さん、引き受けてくれてありがとうございます。頼りにしています」
蓮は非の打ち所がない、誰もが憧れる爽やかな笑顔で真白を迎えた。
「いいえ、常務のご指示ですので。乾真白、ただいまよりサポートに入らせていただきます。神尾さん」
真白は一礼し、あえてビジネスライクな態度を崩さない。
だが、蓮が差し出してきた資料の束を一緒に確認するために席を詰めた瞬間、ふたりの距離が急激に狭まった。
「今回のプロジェクトは、シンガポールの現地法人との連携が鍵になります。資料の英語翻訳と、役員向けのエグゼクティブ・サマリーの作成を、今日の17時までにお願いできますか?」
蓮は真白の目を見つめ、低い声で説明する。
「タイトなスケジュールですが、問題ありません」
「頼もしいな。……やっぱり、乾さんは仕事の時が一番綺麗だ」
最後の言葉は、周囲の雑音に紛れるほどの囁きだった。
真白の耳たぶが、みるみるうちに赤く染まっていく。
「……っ、私的な会話は慎んでください。仕事に集中します」
「すみません、つい本音が」
蓮は少しも悪びれる様子なく、ふっと楽しそうに微笑んだ。
その表情は、誰にでも見せる営業スマイルではなく、どこか少年のような、真白だけに向ける特別な甘い笑顔だった。
真白はキーボードを叩く指先にいつも以上の力を込め、必死に自分のペースを保とうとするのだった。



