向日葵は彩る君に恋をした

「葵!」

グッと強い力で腕を引かれ、私は尻餅をついた。気づけば、伊織くんの胸にしっかり抱き寄せられている。すぐ横には、小さな崖みたいにえぐれた斜面があった。高さはそこまでじゃないけれど、落ちたら確実に怪我をする──危なかった。ほんの一歩、足を踏み外していたら、泥の斜面を滑り落ちていた。

「伊織くん、ごめん。ありがとう」

そう言うと、

「葵は平気?」

「うん、大丈夫……
まって、手。大丈夫?!」

「あ、平気平気」

そう言うけれど、右手をそっと取ると──

「いって……」

「うそ……大変。とにかく先生に見てもらわなきゃ」

「俺、呼んでくるよ!」

山田がすばやく駆け出した。どうしよう……私のせいだ。すみれを避けようとして、足が泥に取られて……。先生に報告すると、黒井さんがすぐに迎えに来て、伊織くんはそのまま かかりつけ医 の元へ向かうことになった。
金木犀の香りが胸のざわめきを一層強くした。