客人たちが帰っていき、広間が静かになったころ。黒井さんが引き戸を開けて、私を客室へ案内してくれた。家政婦さんらしき人が丁寧にお茶を置いてくれる。私は緊張しながら湯気の立つ湯呑みを見つめていた。
しばらくして──ガラリ、と引き戸が勢いよく開いた。
さっきまで髪をきっちりセンター分けにしていた九条さんが、その髪をわしゃわしゃとかき上げながら入ってきた。
そして、どさっと私の目の前に胡座をかいて座る。
……え?さっきまでの“完璧な美青年”はどこへ行ったの。和服はそのままなのに、雰囲気がまるで違う。急に年相応の、普通の男の子みたいになっている。
私は思わず目をぱちぱちさせた。
「いくら?」
「え?」
思わず素っ頓狂な声が出た。さっきまで完璧な所作で生花を披露していた美青年が、低い声のテンションで言ってくる。
「今日のやつ。お金」
「あ、あー……こちら領収書になります」
慌ててカバンから領収書を取り出す。
「黒井」
「はい」
黒井さんが金額を確認し、静かに部屋を出ていった。そして──私と九条さんは二人きりになった。……なんか様子がおかしい。
さっきまでの“凛とした華道家”はどこへ行ったの。今目の前にいるのは、髪をわしゃわしゃにして、和服で胡座をかいて、じろりと睨んでくる、柄の悪そうな青年なんだけど。
え、同じ人……だよね?
視線がぶつかった瞬間、九条さんがじっとこちらを見た。
こ、こわい。背筋がぴんと伸びる。
しばらくして──ガラリ、と引き戸が勢いよく開いた。
さっきまで髪をきっちりセンター分けにしていた九条さんが、その髪をわしゃわしゃとかき上げながら入ってきた。
そして、どさっと私の目の前に胡座をかいて座る。
……え?さっきまでの“完璧な美青年”はどこへ行ったの。和服はそのままなのに、雰囲気がまるで違う。急に年相応の、普通の男の子みたいになっている。
私は思わず目をぱちぱちさせた。
「いくら?」
「え?」
思わず素っ頓狂な声が出た。さっきまで完璧な所作で生花を披露していた美青年が、低い声のテンションで言ってくる。
「今日のやつ。お金」
「あ、あー……こちら領収書になります」
慌ててカバンから領収書を取り出す。
「黒井」
「はい」
黒井さんが金額を確認し、静かに部屋を出ていった。そして──私と九条さんは二人きりになった。……なんか様子がおかしい。
さっきまでの“凛とした華道家”はどこへ行ったの。今目の前にいるのは、髪をわしゃわしゃにして、和服で胡座をかいて、じろりと睨んでくる、柄の悪そうな青年なんだけど。
え、同じ人……だよね?
視線がぶつかった瞬間、九条さんがじっとこちらを見た。
こ、こわい。背筋がぴんと伸びる。



