お家元披露で恥をかくわけにはいかない。だから慌てて花屋に電話して、いくつも花を見た。けれど――どれも美しくなかった。下処理も水揚げも雑すぎる。茎は乾いて、葉はしなびて、花は呼吸ができていない。こんなの、花が気の毒だ。そんなとき、亀井さんが言った。
「ここの花屋に頼んでみては?」
紹介されたのが、すずらんだった。半信半疑で頼んだら―届いた紫陽花は、丁寧に処理されていて、驚くほど美しかった。
茎の切り口は新しく、水揚げは完璧で、葉の一枚まで生きていた。無事に披露できて、ほっと胸を撫で下ろした。
話を聞けば、その紫陽花を処理したのは花を届けてくれた俺と同い年の学生だった。こんなに丁寧に?嘘だろ。そう思った。
それからだ。『部屋が汚い』だとか、『健全な精神は健全な肉体に宿る』とか、理屈をズカズカ言ってくる。変なやつだと思った。
けれど―花に触れる手は優しくて丁寧で、今まで見た誰よりも花を愛でているのがわかった。だから、ほんの賭けだった。彼女と契約した。
葵は、真っ直ぐで明るくて楽しいやつだった。ズカズカものを言うし、なのに料理は上手で、教え方もわかりやすい。一緒にいたら楽しくて、こんな感情は初めてだった。
葵といると、花の色が違って見えた。
葵といると、花をいける手が軽くなった。
葵といると、“俺の花”が少しずつ変わっていった。
「ここの花屋に頼んでみては?」
紹介されたのが、すずらんだった。半信半疑で頼んだら―届いた紫陽花は、丁寧に処理されていて、驚くほど美しかった。
茎の切り口は新しく、水揚げは完璧で、葉の一枚まで生きていた。無事に披露できて、ほっと胸を撫で下ろした。
話を聞けば、その紫陽花を処理したのは花を届けてくれた俺と同い年の学生だった。こんなに丁寧に?嘘だろ。そう思った。
それからだ。『部屋が汚い』だとか、『健全な精神は健全な肉体に宿る』とか、理屈をズカズカ言ってくる。変なやつだと思った。
けれど―花に触れる手は優しくて丁寧で、今まで見た誰よりも花を愛でているのがわかった。だから、ほんの賭けだった。彼女と契約した。
葵は、真っ直ぐで明るくて楽しいやつだった。ズカズカものを言うし、なのに料理は上手で、教え方もわかりやすい。一緒にいたら楽しくて、こんな感情は初めてだった。
葵といると、花の色が違って見えた。
葵といると、花をいける手が軽くなった。
葵といると、“俺の花”が少しずつ変わっていった。



