伊織side
花は嫌いじゃない。華道家になるのも、この家にいたらそうなるのは当然だと思ってきた。家にはいつも花が溢れていた。父が花をいけ、母がそれを静かに見つめる。俺が花をいけると、母はいつも褒めてくれた。だから、華道家になった。
実際、センスはあった。父のいけ方を見ていれば、どういければ花が綺麗に魅せられるか自然とわかる。
賞を取るのも難しくなかった。天才だ、貴公子だ――そんなふうに言われた。だから、華道家としてこのまま進むつもりだったのに。
『お前の花の魅せ方は綺麗だ。お手本どおり。
だが、そこに“お前”がない』
『伊織。花誉展で結果を残さなければ、華道家をやめろ』
そう言われた。意味がわからなかった。
さらに追い打ちをかけるように、お家元披露でいつも頼んでいた花屋から花の提供を断られた。父が手を回したらしい。
家も追い出された。別の家に住むよう手配はしてくれたが―正直、わからなかった。
なんで?俺は間違ってない。綺麗にいけている。賞も取っている。華道家としての道を歩いている。
なのに、父は『やめろ』と言った。俺の花に“俺がない”って、なんだよ。どういう意味だよ。どうすればいいんだよ。
その答えが、あの日の俺にはまったくわからなかった。
花は嫌いじゃない。華道家になるのも、この家にいたらそうなるのは当然だと思ってきた。家にはいつも花が溢れていた。父が花をいけ、母がそれを静かに見つめる。俺が花をいけると、母はいつも褒めてくれた。だから、華道家になった。
実際、センスはあった。父のいけ方を見ていれば、どういければ花が綺麗に魅せられるか自然とわかる。
賞を取るのも難しくなかった。天才だ、貴公子だ――そんなふうに言われた。だから、華道家としてこのまま進むつもりだったのに。
『お前の花の魅せ方は綺麗だ。お手本どおり。
だが、そこに“お前”がない』
『伊織。花誉展で結果を残さなければ、華道家をやめろ』
そう言われた。意味がわからなかった。
さらに追い打ちをかけるように、お家元披露でいつも頼んでいた花屋から花の提供を断られた。父が手を回したらしい。
家も追い出された。別の家に住むよう手配はしてくれたが―正直、わからなかった。
なんで?俺は間違ってない。綺麗にいけている。賞も取っている。華道家としての道を歩いている。
なのに、父は『やめろ』と言った。俺の花に“俺がない”って、なんだよ。どういう意味だよ。どうすればいいんだよ。
その答えが、あの日の俺にはまったくわからなかった。



