すると――
「あれ、九条くんじゃん」
「九条様だ!」
複数の男女グループが一気に集まってきた。特進クラスの子たちだ。さっき射的でお面をずらして完全にバレた。私は反射的にお面をすっと被り直し、息を潜めて、すすすっと少し離れる。
「来るなら言ってくれれば良かったのに。
俺たちの誘い断ったくせに」
「なあ、回ろうぜ」
「そうだよ!一緒に回ろうよ」
わいわいと囲まれる伊織くん。その光景は、まさに“九条様”だった。
「いや、俺、別できてるから」
その一言に、胸がきゅっとなる。私は声を変えて、すすっと逃げる。
「私はだいしょうぶ、では」
だって―伊織くんだって、クラスの友達と回りたいよね。私に付き合う必要なんてない。人混みに紛れながら、胸の奥がじわじわ痛くなる。
……というか、これ。私、完全に伊織くんのこと好きなんだよな。彼は『恋人とかあほらし』と言ってたし、私なんか恋愛対象外だろう。
そもそも―技術めあて、だよね。自分で“技術めあて”なんて言うのはだいぶ自惚れかもしれないけど、それでも、そう思ってしまう。



