向日葵は彩る君に恋をした

「あら、お坊ちゃん。よくいらっしゃいましたね」

柔らかい声が玄関に響く。伊織くんは軽く手をあげる。

「亀井さん、こいつの浴衣着付けてやって」

「ええ、もちろん。お待ちしてましたよ」

「え?え!?」

思わず伊織くんを見る。彼はまったく動じず、

「俺も着替えてくる。じゃあ」

それだけ言って、すっと去っていった。置いていかれた。え、えー。

「どうぞ、こちらへ」

亀井さんが優しく微笑む。案内された部屋には、浴衣が何着か並んでいた。

「いくつか見繕ってみたのです」

「ありがとうございます」

「やっぱり、これがいいですね。坊ちゃんの言った通りです」

淡い黄色に百合の柄の浴衣。袖を通すと、肌にさらりと馴染む。

「よくお似合いですね」

「あ、ありがとうございます」

「坊ちゃんが、随分と良い顔になられました」

亀井さんは、まるで家族の成長を見守るように微笑んだ。

「…そうですか?」

「ええ」

少し迷ってから、私は口を開いた。

「あの、聞いてもいいですか?」

「は、はい」

「どうして…伊織くんのお父様は、
大会で結果を残さなければ華道家をやめろとおっしゃるのでしょう」

すると亀井さんは、手を止めた。