向日葵は彩る君に恋をした

「伊織……来てたのか」

低く響く声に、思わず身構える。振り向くとそこには黒髪をオールバックにし、和装。端正な顔立ちが伊織くんに似ている──いや、もっと鋭く、威厳がある。かなりの男前だ。

「父上」

伊織くんが真っ直ぐに目を向ける。

「……君は」

視線がこちらに向いた瞬間、背筋が伸びる。

「日向 葵と申します」

スッと頭を下げる。

「君が、息子が世話になっているね」

「あ、いえ……」

「……伊織」

「はい」

「約束は覚えているな」

「……はい」

「花誉展で結果を残さなければ、華道家としての道は諦めろ」

その声は、容赦なく厳しい。伊織くんの表情が硬くなる。

「諦めるなら早い方がいいからな」

そう言い残し、真斗さんは踵を返して去っていった。和装の裾が静かに揺れ、背中は圧倒的な存在感を残したまま遠ざかる。