向日葵は彩る君に恋をした

あー、困ったな。ずっと囁かれる悪口にもう疲れてしまった。外を歩いていたとき、いきなり腕をグッと引かれた。
え!?と思った瞬間──

バッシャーン。

「え、え!!」

水しぶきが大きく跳ねて、視界が一瞬白くなる。

「悪い、ちょっと濡れたか?」

そう声をかけてきたのは、私を庇ってびしょ濡れになっている伊織くんだった。

「いやいや、な、なんで……」

「……ってか、なんだよ。あれ」

伊織くんが上を睨む。見ると、女子生徒がパタパタと逃げていくところだった。

「九条様信者」

「は?」

「貴方の信者ですよ」

「俺は教祖になった覚えはない」

そう言いながら前髪をかきあげる。水もしたたる良い男……なんだけど。

「ってか、くっさ。なんだよこれ」

「ぞうきんの搾り汁じゃない?」

「はあ!?」

「お決まり展開だよ」

「ってか、なんかザリガニみたいなにおいする」

「うわ、ほんとだ」

思わず鼻をつまむ。

「でも、ザリガニって本当は臭くないらしいよ」

「そうなの?」

こっちを見る伊織くん。

「誤った飼育で水が腐敗した匂いなんだって。
ザリガニ本体は臭くないらしい」

「へぇー……って、そうじゃない」

伊織くんが眉間をぎゅっと寄せる。

「なんだよ、くそ。さいあく」

「ごめん……私のせいで」

ぎゅっと制服を握りしめる。