「良かったら黒井さんもどうぞ」
そう言って、お皿を差し出す。
「私もいいんですか?」
「どうぞどうぞ」
黒井さんも交えて、三人で夕食を囲むことになった。
「伊織様、大変美味しいです」
……黒井さん、ちょっと泣いてない?私は引きながらも食べる。うん、美味しい。
「だろ」
そう言って笑う伊織くんは、どこか嬉しそうだった。そのあと、黒井さんは仕事に戻っていった。
それからお風呂を済ませて、リビングに集まる。約束通り、勉強を教えてくれるとのことだが──
「え、なんでわかんないの?」
「これ公式使えばいいだけだろ?」
「その計算、暗算できるだろ?」
……。
「伊織くん」
「なに?」
「いや、あの……教えてもらっている立場で大変恐縮なんですけど……教え方、へった」
「はあ?」
不機嫌そうに形の良いの眉がよる。
「いや、わかる。伊織くんが天才肌なのはわかった。
暗算めちゃくちゃ早いのもわかった。
公式使うのもわかった。
ただ、解けないの! 難しいの!」
そうまくしたてる私に、伊織くんは「うーん」と唸りながら教科書を開く。
「………わかった」
長い沈黙のあと、スラスラとペンを走らせる。
「つまり、こうで、そこからこう……そしてこう」
一つ一つ丁寧に公式を書き出して、今度はゆっくりと、噛み砕きながら説明してくれた。



