向日葵は彩る君に恋をした

荷物を持って部屋を案内してもらうと、そこにはベッドと机が置かれているだけだった。

「夜さ、花いけたいんだけど。
これ用意できる?庭にあると思うんだけど」

「……うん、わかった」

リストを受け取ると、伊織くんは「じゃあ」とだけ言ってふらりと部屋を出ていった。
部屋を片付けたあと、リストのスイートピーを摘み、水揚げと下処理をしていると──

「やっぱり、良い仕事すんな」

伊織くんが隣に腰を下ろした。

「そう?」

「ああ」

「どうして……華道家になったの?」

作業をしながら聞いてみる。

「……どうして、か。
あの家にいたら、なるもんだと思ってた。
いつも花が生活の一部だったし、それを俺もやるって思ってた。
だからこれから先も俺は変わらない。
逆に、それ以外に何すればいいのかわからない」

真っ直ぐと言い切るその言葉。

「でも、親父に言われた。
“お前は花を綺麗に魅せられるが、それだけだ。
お手本通り。
そこにお前はない”ってさ」

そう言って、スイートピーを手に取り見つめる。

「……なんか難しいね」

「逆に感情が必要なのか?」

「え?」

「適材適所だと思うんだよ。
俺は身近で花をいける仕事を見てきて、自分にも向いてると思った。
花が好きとか嫌いとか、そういう曖昧な感情って必要なのかわからない」

真面目にそう言う伊織くん。中々冷めてらっしゃる。