「なので、それがわからない限りは華道家としての道は諦めろ、と家からもほぼ追い出されていまして。
今はここに住んでいるわけです。
今回はお家元披露があったので、あちらの実家を使ったんですよ」
黒井さんが淡々と説明してくれた。
なるほど……父と不仲。さらに“華道家として足りないもの”を気づかせたいのか、諦めさせたいのか。まあ、プロの道は厳しいからね。それで家から追い出されて、ここにいると。
……それにしても、追い出されたにしてはいい家に住ませてもらってるよね?高校生でしょ?お金持ちはちがうな。
「……あの、本当にわからないですか?」
恐る恐る聞くと、九条さんは短く答えた。
「ああ。
正直、顔も良い、人当たりもいい、頭もいい、花をいけるセンスもある……何が足りない?」
真顔でそう問われた。
……え?なに言ってんの?ほんとに何言ってんの?
顔が綺麗だから許されてるところ、絶対あるよね?いや、あるどころか多いよね?黒井さんが苦笑しながら続ける。
「そうなんですよね。私にもわからないんです。真斗様には生活の手助けをするように言われていますが……私も家事はそこまで出来ないので」
黒井さんが肩をすくめる。わからないのか……。思わずこめかみを押さえた。
この家の散らかり具合、さっきの二重人格みたいな態度、生活力ゼロの気配、父親との確執、“華道家として致命的に足りないもの”──



