「初めまして、真宵 椿と申します。
貴女が──日向 葵さんですね?」
微笑みながら近づいてくる椿さん。紅の着物がふわりと揺れて、空気が少し変わった気がした。
「え、あ……はい。初めまして」
慌てて頭を下げる。
「伊織の花、変わりましたね。
貴女の影響だと聞きました」
意味深な笑み。胸がきゅっとする。
「い、いえ、そんな……」
「花の処理、丁寧ですわね。
伊織の“いけ”で拝見しました」
「あ、ありがとうございます」
「ですけど──」
椿さんがすっと距離を詰め、耳元に落ちる声は、さっきまでの柔らかさとは違った。
「貴女には、伊織は渡しません」
一瞬、呼吸が止まった。椿さんは何事もなかったように微笑み、そのまま優雅に去っていく。……げ、幻聴?いや、絶対に言った。弓弦くんを見ると、肩をすくめていた。
「女ってこわいですねー」
完全に他人事だった。



